10月29日から31日まで幕張メッセにて開催されている「高機能素材Week」内の「第9回 高機能セラミックス展」にTOTOが出展。トイレに関する知見を活かして事業を開始してから40周年を迎える同社のセラミック事業について、新たな顧客となりうる業界関係者向けに紹介している。
40周年を迎えたセラミック事業の売り上げが急拡大
「TOTO」という企業名を目にしたとき、トイレをはじめとする住宅の水回り機器がすぐさま連想されることだろう。1917年に「東洋陶器」という社名で創立した同社は、衛生陶器事業として便器の生産を開始して以来、100年以上にわたりトイレメーカーとして製品を展開している。
そんなTOTOは、陶器の生産で培われた知見を応用して1976年よりファインセラミックスに関する調査・研究をスタートさせ、用途を探索。FPD(フラットパネルディスプレイ)製造装置の部材や水栓向けセラミックバルブ、ホームサウナ用ヒーターなどの生産を経て、1984年には正式な事業化に至ったという。
これまで40年もの歳月を重ねているTOTOのファインセラミックス事業だが、担当者によると、事業開始からおよそ30年にわたって大きな利益を生んでいなかったとのこと。しかし、下水インフラが整っておらずまだ需要が無かった便器を、“将来必ず必要になる”という予測のもと事業として続け成功するなど、直近の利益につながらない事業でも長い時間をかけて見守るTOTOの風土に守られ、ファインセラミックス事業も今日に至るまで継続。そして今では高い利益率を誇る事業領域となり、2025年3月期第2四半期の決算では、主要事業である日本国内の住宅設備事業と営業利益で肩を並べる規模にまで成長したとする。
半導体製造装置の部材としてさらなる市場拡大を目指す
今回のTOTOブースでは、ファインセラミックスでできた大きなサイズの構造部材が展示された。焼成工程で収縮するなどの特性を持つセラミック素材については、温度管理などさまざまな面でノウハウが必要であり、その日の気温や湿度によって工程を変化させるなど、まさに“職人技”が求められる。このような一朝一夕では得られない知見を有する同社にとって、今回展示されたもの以上に大きい構造部材を製造できる点は、非常に大きな強みだという。
また近年需要が急拡大している製品のひとつに、半導体製造装置用の静電チャックがあるとのこと。ウェハを負担なく保持・固定するきわめて均一な表面を実現するとともに、熱やプラズマなど過酷な環境でも耐えうる高耐久性を有する材料として、TOTOのファインセラミックス技術が活用されており、半導体産業の盛り上がりもあって急速に事業が拡大しているとする。