日立製作所(日立)が10月30日に発表した2025年3月期第2四半期(7~9月)の連結決算(国際会計基準)は、純利益が前年同期比16%減の1169億円だった。また、売上高にあたる売上収益は11%減の2兆3345億円だった。
同社の中核事業である「IT(デジタルシステム&サービス:DSS)」と「環境(グリーンエナジー&モビリティ(GEM))」は生成AIブームを追い風に好調だった一方で、自動車部品の日立Astemoの持ち分法投資損益の悪化が業績に響いた。
30日の決算発表会に登壇した執行役専務 CFO(最高財務責任者)の加藤知巳氏は「DSSとGEMの上期(4~9月)の受注額はそれぞれ1兆5222億円(前年同期比9%増)、3兆1154億円(同42%増)と、メガトレンドを捉えた成長モメンタムは継続している」と説明した。
特に急成長を続けているのが「IT」や「エネルギー」、「鉄道」といった分野だ。生成AIの普及により高まる送電網設備の更新需要や、再生可能エネルギー、データセンター関連ソリューションが好調だった。第2四半期における鉄道分野の受注高は7242億円と前年同期比で290%増加した。
日立は8月26日、シンガポールの通信大手シンガポール・テレコム(シングテル)とデータセンター事業で提携すると発表。アジア太平洋地域において、次世代データセンターとGPUクラウド分野で戦略的提携を拡大し、データセンターを企業が効率的に導入することを後押しする。
送配電子会社の日立エナジーの業績も好調だ。同社は2020年にスイス重電大手ABBから買収した送配電網部門が前身。欧米を中心に120カ所以上の生産拠点を持つ。2027年までに送配電機器の増産に45億ドル(約7000億円)を投資すると発表しており、北米や欧州、インドなどの工場に投資し、送配電機器を増産する方針だ。
日立エナジーのCEO(最高経営責任者)に7月就任したアンドレアス・シーレンベック氏は「AIの普及などにより、今後ますますデータセンター需要が拡大するだろう。それに伴い再生可能エネルギーや送電網関連ソリューションの需要も増していく。設備投資を加速させるとともに、日立グループのIT部門との協業を深めて、より良いサービスを提供していく」と述べた。
日立の2025年3月期通期の見通しについては、売上収益は前期比6%減の9兆1500億円、調整後営業利益は16%増の8750億円と、従来予想からそれぞれ1500億円、200億円引き上げた。純利益は2%増の6000億円の予想を据え置いた。