御多分に漏れず、筆者もPFUのHappy Hacking Keyboardや東プレのREALFORCEなど高級ブランドといわれるキーボードをプライベートエリアでは使っている。筆者の場合、比較的リーズナブルな価格帯のものだが、文字を入力するものすべてに"仕事道具"として妥協のない静かで高速な打ち心地を提供する両キーボード。長い間、用途や接続PCに応じて使い分けているがまったく故障も無く不満は無い。"Good Tools are Half the Work"(良い道具は仕事の半分である)という言葉のごとく、PC周辺機器を仕事道具として捉える切っ掛けを与えてくれたガジェットのひとつだ。

ワークエリアPCの棚卸しを機会にPC環境の整備を図った筆者であるが、やはりキーボード周りに大きな可能性を感じた。ノートPCであるためUSBポートをひとつ犠牲にしてまでキーボードを接続しなくてもという考え方もあるかもしれない。しかし、プライベート空間と同様の押し心地とチャレンジングなキーボードを導入してみようと思い立った挙句に秋葉原のヨドバシAkibaで購入してみたのが左右分割キーボード(FILCO Majestouch Xacro M10SP茶軸/ダイヤテック)である。

分割キーボードを選んだ理由だが、複数ある。まずはスペースの問題だ。テレワークを効率化すべく様々なデスクグッズを導入したがキーボードを配置するスペースが手狭になりつつある、フリースペースのワークスペースも固定デスクよりは面積は若干小さくなっている。分割キーボードでは、水平に置かずとも空いているスペースに左右バラバラで自由に配置できる。そして、何よりもエルゴノミクスであることだ。

とあるコロナ禍の休日。青梅近辺を散策中に野生の大きなイノシシに遭遇し、西部劇の決闘シーンような対峙と緊張を味わった筆者は自宅デスク周辺にダンベルを配備。次なる遭遇への備えとして動画によるイメージトレーニングを重ね、空いてる時間にはダンベルの上下運動を繰り返していた。いつしか、腕周りや肩回りの筋肉が想定以上に増強されてしまい、肩幅より狭いスペースでのキー入力が若干狭く感じていたという契機もあった。

米Kinesis公式サイトにあるThe Full-Body Benefits of Split Keyboards(分割キーボードの全身的なメリット)

この状況に分割キーボードはベストマッチする。腕の配置にシックリくるハの字やV字などベストポジションを探りながら配置できる。Majestouch Xacro M10SPでは、裏面ネジでの高低調整幅も大きいので、傾斜も強めに付けられる。限られたスペースにも関わらず、ふとしたことから大きくなってしまった自身のパーツという状況下でも、ゆったりとしたポジションを確保できている。

1992年には米Kinesis社が左右分割のエルゴノミクスキーボードを発売しており、この分野を開拓。さらにエルゴノミクスを掘り下げた流線形のキーボードも数多く存在するが、同社の公式サイトには、キータイプする際に限られた環境に合わせることが、いかに肘や手首、背中に負担をかけているか、そして分割キーボードがどうメリットを提供するかを解説している。これらキーボードを目にすることはあったが、実機環境で使用してみると長年のキー入力の姿勢からあっというまに解放される不思議な心地よさを感じてしまう。

もうひとつの理由がマクロなギミックだ。Majestouch Xacro M10SPには専用ソフト「FILCO ASSIST」によるマクロ管理機能が備わる。マクロエディターでキーストローク間隔(ms)込みでの複雑なマルチキー登録やひな形テキストなどをドラッグ&ドロップでキーに設定できる。

  • マクロエディターによる設定

プロファイルにそれぞれM1~M10キー(中央分割部に配備されたキー)にマクロ設定が行えるのだが、さらにレイヤー4つを持つ。レイヤー切り替えは

Fn + Alt + [1]: レイヤー1 (Basic Layer)
Fn + Alt + [2]: レイヤー2
Fn + Alt + [3]: レイヤー3
Fn + Alt + [4]: レイヤー4

で行えるため、単純に考えれば40設定。使いこなせるか不安になるほどカスタマイズできる設定数がチャレンジングだ。設定した割り当てはキーボードにハードウェアマクロとして記録されるためUSBで接続した環境で独自キーボードを使用できるのも利点だ。

しかしながら難点もあった。矢印キーが独立しておらず、「fn」キーとJ(左)K(↓)L(→)I(↑)に割り振られている点だ。これは文書作成の際のカーソル移動に多用するため、筆者にはきつい。そこでマクロ設定である。左手側のM1(Up)、M2(Down)、M3(Left)、M4(Right)と割り当て、同様に右手にM6(Up)、M7(Down)、M8(Left)、M9(Right)と矢印キー二刀流の布陣をとった。

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