プリペイド式Visaカードを提供するTISインテックグループ企業ULTRAは、社名を「Yeny(エニィ)」と変更、同社は変更に伴う今後の展望とTISインテックグループにおけるキャッシュレスへの取り組みについて説明する記者発表会を10月24日オンラインで開催した。記者会見では、若年層に強みを持つプリペイドカード事業の説明とサービスをBtoB領域に発展させた新サービス「PayBlend」の紹介が行われた。記者会見の模様をレポートする。

ブランド力強化と新サービス「PayBlend」の認知度向上のためULTRAからYenyに社名変更

Yenyは、2018年にFinTechサービスを提供する企業として創業、2020年に「ultra pay カード」をリリースし2022年にTISの連結子会社化。2月にBtoB向け新サービス「PayBlend」の提供を開始し、本年10月23日に会社名をULTRAから株式会社Yenyに変更している。今回の社名変更については、ブランド力強化のため2023年11月に策定した新たなミッション・ビジョン「『おかね』を、かるく。」「『だれでも』使える。『みんな』を豊かにする。」の実現と「PayBlend」の認知向上のため行われたもので、金銭にあたる「Yen」と誰でも、どんな時でも、何にでもを表す"anyone、anytime、anything"の「any」を組み合わせものとなっている。

  • Yeny 代表取締役社長 竹谷直彦氏(向かって左)とTIS ペイメントサービス事業部事業部長兼、Yeny 取締役企画本部長 津守 諭氏(向かって右)

記者会見では、Yeny 代表取締役社長 竹谷直彦氏が同社のメイン事業である「ultra pay カード」と新サービス「PayBlend」についての説明とTIS ペイメントサービス事業部事業部長でYeny 取締役企画本部長 津守 諭氏がTISインテックグループにおけるキャッシュレスの取り組みと展望についての説明を行った。

若年層に強みを持つ「ultra pay カード」

同社の提供する「ultra pay カード」は、誰でも審査なし、入会金・年会費無料で利用できる事前チャージ式のプリペイド式Visaカード。審査も年齢制限もないためクレジットカードを持てない若年層で多く利用されている。特に利用層は34歳以下のユーザーが75%を占め、その内24歳以下が45%となっており、利用は非対面が97%で、ほとんどがオンラインで利用されている。

  • ultra pay カードの顧客層と利⽤先の傾向(同社記者会見資料より)

同社によれば、利用内容はゲームの課金や漫画等のコンテンツの購入、ファンコミュニティでの「投げ銭」などの通称「推し活」に集中しており、特に「推し活」に注目しファンコミュニティ領域でのビジネスを強化すべく現在様々なタイアップビジネスを展開している。その事例としてKADOKAWAグループの漫画コンテンツ「スパイ教室」とタイアップした主人公録り下ろしボイスストーリーを用意。「ultra pay」カードアプリ内での1回あたりのチャージ金額に対応して、録り下ろしボイスをプレゼントするキャンペーンを実施している。その効果については、同社平均との比較で初月から3カ月のカード稼働率が約10倍、発行後2年のカード稼働率が約8倍、利用稼動単価が120%アップ、チャージ稼動単価で140%アップに加えて、一般に比べて退会率1%程度と低い水準に抑えられている。

  • ファンコミュニティx 決済における効果事例(同社資料より)

このように同社では総務省、矢野経済研究所の調査でトータルで4.7兆円、ファンコミュニティだけで1.6兆円あるいわれるエンタメビジネス市場を攻略すべく、BtoB向け「ファンコミュニティ」ビジネスにも着目。本年2月より新サービス「PayBlend」を展開している。

企業ブランド向上を目指す決済サービス「PayBlend」

「PayBlend」(公式Webサイト)

新プロダクト「PayBlend」は、キャッチフレーズとして「Payをシンプルに、ブランドのカラーで。」を掲げ、事業者向けにブランド向上を意識した決済サービスを提供。それぞれサービスの決済時おいて、よりブランドカラーの強いスマートフォンアプリや決済用プリペイドカードなど付加価値のある決済サービスを展開し、ブランド向上を図る。

同社では、導入事例としてサッカークラブのJ3のアスルクラロ沼津での運用例を紹介。決済アプリ「アスルクラロ沼津 Pay - by PayBlend」にチームのホームページを組み込み、情報発信からファンコンテンツの提供を行っている。オリジナルプリペイドカードの提供、選手のサイン入り豪華プレゼントキャンペーンやオリジナルグッズの提供などを展開し、チームとファンとの距離を近づけている。

  • 「PayBlend」のスポーツファンコミュニティへの導⼊事例(会見資料より)

TISインテックグループが目指す今後のキャッシュレスの展望

最後に津守 論氏がTISインテックグループの目指すキャッシュレスに関する今後の展望について説明を行った。同氏は、グループが企業ミッションとして「金融包摂」「健康問題」「都市への集中・地方の衰退」「低・脱炭素化」を掲げていることに言及し、今回その中のすべての人々に平等に金融サービスを提供する「金融包摂」がキーワードとして関わりがあることを説明した。同社ではキャッシュレス社会の未来について、経産省の発表した「キャシュレスの将来像」をもとに「支払いを意識しない決済が広がり、データがシームレスに連携されるデジタル社会」を構想している。これを実現するために、グループを挙げた金融DXサービスや決済サービスの普及に力を入れていくという。

特に若い世代の顧客の獲得に強みを持つYenyの培ってきたノウハウを効果的にいかすべく同社グループは、2024年9月18日にプロバスケットボールB.LEAGUEとサポーティングカンパニー契約を締結、所属クラブ部の企業DXや地域の社会課題解決につながるビジネス創出の取り組みを行っている。

  • TISインテックグループのアプローチ(同社記者会見資料より)