NTTデータと米オラクルは10月23日、日本市場におけるソブリンクラウドのサービス強化に向け協業することを発表した。両社は翌日に開催されたイベント「Oracle Cloud Forum」において会見を行い、協業の狙いなどについて説明を行った。
NTTのデータセンターからOCIを提供
NTTデータは協業の下、「Oracle Alloy」を自社のデータセンター内に導入し、金融機関向けクラウドサービス「OpenCanvas」を拡張し、データ主権要件への対応を強化する。
「Oracle Alloy」は、パートナーのデータセンターにオラクルのクラウドプラットフォーム「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」を設置し、OCI上で構築したクラウドサービスを提供できる仕組みだ。
NTTデータは日本国内にデータを保持しながら、150以上のOCIのサービスを顧客に提供する。NTTデータ 執行役員 テクノロジーコンサルティング事業本部長 新谷哲也氏は、OCIの提供形態について、「OpenCanvasで提供するが、OpenCanvasとは分けて提供する」と説明した。
新たなニーズに向けて第三の選択肢を提供
新谷氏は、ソブリンクラウドの現状について、「世界的にニーズが高まっているが、ニーズが変わってきている。もともと、EUの法規制を遵守するうえで主権を確保するという目的から生まれたが、今は、経済安保の観点から求められている」と語った。
NTTデータはこれまでソブリンニーズに対し、セキュリティ、閉域ネットワークによる接続、監査といった要件に対応するサービス「OpenCanvas」を提供してきた。
しかし、「もっとAIを使いたい、セキュリティを確保した状態でパブリッククラウドの機能を使いたいといったニーズが高まっている。パブリッククラウド、自社のデータセンターで提供するOpenCanvasに加えて、第三の選択肢を提供しないと、こうしたニーズに応えられないと考えた」と新谷氏は述べた。
自社のデータセンターからパブリッククラウドであるOCIの機能を提供することで、ソブリンクラウドに対するニーズに応えていこうというわけだ。
新谷氏は、「Oracle Alloyの提供により、OpenCanvasにソブリンクラウドの要素を足しこむ。Oracle Alloyはコンパクトに幅広く機能拡充できる」と語っていた。
日本に対する投資1.2兆円でソブリンクラウドを拡充
日本オラクル 取締役 執行役 社長 三澤智光氏は、「Oracle Alloyはパブリッククラウドと機能は同じだが、仕組みが異なる。顧客に新たな選択肢を提供できる、このモデルを提供できるベンダーはわれわれだけ」と、自信を見せた。
また、三澤氏は「ソブリンクラウド要件を満たすために、日本でサポートを完結できる体制を準備している。当社は今年4月、日本に対する1.2兆円の投資を行うことを発表したが、その一環」と語った。
1.2兆円の投資の中に、365日24時間のサポート体制の整備、データセンターの構築、ソブリンクラウドとして求められる日本国籍の人が日本でオペレーションすることが含まれるという。
さらに、三澤氏は、ミッションクリティカルなシステムの課題解決について、「企業にはパブリッククラウドだけでは答えられないニーズがある。ただし、ミッションクリティカルなシステムは5年、7年ごとに引っ越し作業が必要だった。この引っ越しをなくせば、日本のITは変わる。このあたりの付加価値を、信頼できるNTTデータとどう作っていくか」と語っていた。