資金確保へ必死の半導体「ラピダス」 3メガが出資を検討

三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3メガバンクと、日本政策投資銀行の計4行が、次世代半導体の国産化を目指すラピダス(小池淳義社長)に計250億円を出資する方針であることが分かった。

 3メガは50億円ずつを、政投銀は100億円を投じる。ラピダスは2027年の量産に向けた資金を確保する必要があり、これに大手銀行が足並みを揃えて応える格好だ。実際にラピダスが出資を受け入れるのは25年とみられる。

 ラピダスは既に三菱UFJ銀やトヨタ自動車、NTT、ソニーグループといった8社から計73億円の出資を受けている。量産化を見据え、銀行団に1000億円規模の資本増強も要請してきた。政府はラピダスの研究開発などに9200億円を助成する方針で、同社は民間からの出資分を含めて1兆円近くを確保したことになる。

 ただ、27年の量産に向けては5兆円規模の資金が必要とされ、残り4兆円の調達はこれからだ。ラピダスは政府の追加支援や、融資に政府保証を付けるための法整備に期待をかけている。

 だが、9月20日に齋藤健経済産業相(当時)は「次世代半導体の量産化に向けた関連法案は、現実問題として、次期臨時国会での提出は難しい」と発言。新たな内閣になっても法案を提出する方針に変わりはないかとの問いには「当然のことながら新たな総理・内閣において判断していく」と述べた。

 10月1日に発足した石破茂内閣は岸田文雄政権の経済政策を継承する姿勢を示しているものの、同27日の衆院総選挙後の政局自体が読みにくく、個別の政策の行方は予断を許さない。

 政府の支援で建設したラピダスの生産拠点などと同社の株式を交換することで出資を行うとの観測もあるが、実現可能性は現時点では不透明だ。ラピダスに出資済みの企業からは従来、「(政府との)お付き合いの域」として少額出資にとどめたい意向も漏れ伝わる。順調に支援者を増やしていけるか、政府とラピダスの本気度が問われる。

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