2024年9月4日から6日まで、最先端科学・分析システム&ソリューション展「JASIS 2024」が幕張メッセにて開催された。その中でアジレント・テクノロジーは、未だ課題が残されている“ラボのデジタルトランスフォーメーション(DX)”にアプローチする製品を数多く紹介。また新たに開発された新製品も紹介し、ワークフロー効率化に向けた手段を提案した。

  • アジレント・テクノロジーブース

    JASIS 2024のアジレント・テクノロジーブース

遅れがちな“ラボのDX” - 信頼性を向上させるデータ連携

今回の出展でアジレントが中心テーマに据えたのは、同社が近年特に力を入れている“ラボのDX”だ。

企業や業界にはよるものの、デジタル化の波からは取り残される傾向にある“ラボ”。特に日本国内ではデータ管理のサイロ化が顕著で、紙を介したやりとりが未だに主流となっている場合も少なくないという。そのため共有の際の手間がかかる上、データの改ざんや漏洩に対するリスクが残されるなど、実験結果の信頼性が脅かされている。

そこでアジレントは、機器の連係によるラボ全体でのデータガバナンスの重要性を訴え、その実現に貢献するソリューションを提供している。同社が提供するソフトウェア製品群「OpenLab」を構成する科学データ管理システム(SDMS)「OpenLab ECM XT」は、アジレント製の分析機器はもちろん、他社の測定器やシステムから生成されるデータをクラウド上またはオンプレミス形式で一元管理するもの。担当者によると、同システムを導入してもユーザーによるオペレーションに変更が加わることはなく、多くの機器を介したデータを人手を介さず集約できるといい、これによりデータ改ざんやミスによる書き換えを防止できるとしている。

装置予約やサンプル管理を集約する新ソフトウェアも紹介

そして同社は9月、ラボのオペレーション管理を効率化するSaaSベースのツール「Agilent CrossLab iLabソフトウェア」の日本市場への提供を本格的に開始した。同ツールは、ラボ内のさまざまな装置に関する情報を集約し利用予約などを並行管理するもので、現在は手書き入力やExcel管理などが主流になっている装置管理のDXに貢献するとのこと。また機器ごとやユーザーごとに使用時間を可視化したレポートも簡単に出力可能で、ラボ運営の効率化が期待できるとする。

  • iLabソフトウェアの利用イメージ

    iLabソフトウェアの利用イメージ。機器やユーザーごとの使用時間が手軽に集計できる(提供:アジレント・テクノロジー)

またアジレントの担当者は、ラボでの利用に特化したiLabソフトウェアの強みとして、さまざまな拡張機能ラインナップを挙げる。測定で必要な消耗品やサンプルの管理、さらにはプロジェクト管理に役立つツールも用意されており、これらはアドオンモジュールとして追加が可能であるため、それぞれのラボに合わせて最適な形で導入できるとする。なお、全世界170以上の企業・施設での導入実績がある同ソフトウェアは英語環境を想定したUI(ユーザーインタフェース)であるものの、ブラウザの自動翻訳機能を用いることで十分に運用が可能だとしている。

ワークフロー効率化に貢献する3つの新製品

そしてアジレントブースでは、同社がお披露目した3つの新製品も展示された。

8850 GCシステムは、機器内部の自己診断などといったインテリジェンス機能を備えたガスクロマトグラフ(GC)システム。その特徴は装置の小ささで、横幅は約28.3cm、設置面積や従来機器の約半分まで削減できるといい、多くの装置がひしめくラボの有効活用に貢献するという。また装置あたりの価格を抑えられるとともに、日々のルーチン分析であれば標準的なものに比べ30%ほど消費電力を低減させるなど、運用の中でも効率化に貢献するとしている。

  • 8850 GCシステム

    6月に発表された8850 GCシステム

また同じく初めて展示された「ADS(Advanced Dilution System) 2」は、アジレントとして初めてリリースした統合型自動希釈システム。半導体材料の分析などで行われるICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析法)やICP-OES(誘導結合プラズマ発光分光分析法)など、高い精度が求められる分析の前処理で用いる装置で、サンプルの希釈や標準溶液の調製などに用いられる。これらの工程を手作業で行う場合、作業が煩雑であるためミスのリスクを排除できず、繰り返しの作業になると業務負荷が大きい点も課題だったとのこと。そのため自動化することで、精度も向上しワークフローの簡易化が実現されるとする。

  • ADS 2

    4月に発表されたADS 2

また、見た目には従来品と変わりがないものの、大幅な改良が施された製品も展示された。それが四重極飛行時間型機器「Revident LC/Q-TOF」だ。改良が加わったのは装置の“中身”で、これまでは複雑な内部設計となっていたのに対し、新製品では抜本的に見直し、明瞭な形に変更したとのこと。これにより、不良が発生した際の修理作業などが格段に簡単になるという。またインテリジェント機能も備えているため、メンテナンスの手間がさらに削減されるとした。

  • Revident LC/Q-TOF

    2023年6月の発表以来初めてお披露目されたRevident LC/Q-TOF

このようにラボでのさまざまな工程における生産性や作業を効率化する新製品を発表し続けているアジレント。担当者は「我々は、ラボで行われる作業に関わるワークフロー全体を楽にする装置を提供し続けていきたい」と話した。