AI投資会社のAir Street Capitalがこのほど、2024年におけるAIの現状と将来への影響について分析した「State of AI Report 2024」(AIの現状レポート2024)を公開している。このレポートの注目ポイントとしては、OpenAIの影響力が低下していること、上場AI企業の企業価値が大幅に上昇していること、基礎モデルの構築やビデオやオーディオ生成に取り組むAI企業が本格的な収益を上げ始めていることなどがある。
State of AI Report 2024の概要および全文は次のページで見ることができる。
State of AI Report 2024の注目ポイント
レポートでは、これまでの生成AIの競争はOpenAIが牽引しており、同社は数十億ドルの収益を上げたが、そのリードがすでに失われつつあると指摘している。OpenAIは現在、最新の大規模言語モデル(LLM: Large Language Model)としてGTP-4を展開しているが、AnthropicのClaude 3.5 SonnetやGoogleのGemini 1.5、XのGrok 2、MetaのLlama 3.1 405 Bモデルなど、他社のLLMも徐々にその性能に追いついてきており、独自モデルの優位性は失われている。
OpenAI o1は推論タスクでは今のところ優位を保っているものの、その性能は安定性を欠いており、一部のタスクでは強力な論理能力を発揮する一方で、他のタスクの論理能力は非常に弱いといった特性があるという。そのためレポートでは、o1モデルの優位性がいつまで続くかという点でも懐疑的な見解が示されている。
大手テクノロジー企業が、欧州や米国の一部の州の規制当局と対立している点も、AI業界の課題として取り上げられている。これは主に個人情報や著作権の保護という観点での懸念によるものだが、今年に入って新たにエネルギーの課題も浮上した。AIを支える計算能力は電力に依存していることから、発電による環境負荷の高さが明らかになったからである。そのため、AI企業はAIインフラの構築に多大な資本を投入する必要が生じている。
それらの課題を抱えながらも、NVIDIAをはじめとする大手AI企業は価値を大幅に高めており、金額にして9兆ドルに達しているという。ただし、その規模に対して非上場企業への投資は桁違いに少ないとのこと。基礎モデルの構築や、ビデオやオーディオ生成に取り組むスタートアップ企業など、少数のAI企業は本格的な収益を上げ始めているものの、長期的な持続可能性に関しては疑問が残ると指摘されている。
State of AI Report 2024は2018年より7年間にわたって毎年公開されている。レポートは業界と研究界の AI 実践者によってレビューされており、AI業界の現在と将来を確認する上で重要な指針となる。