10月16日~19日にかけて東京ビッグサイトで開催されている日本最大級の航空・宇宙の総合展示会「2024国際航空宇宙展」。三菱電機のブースで目を引いたのは、小型月着陸実証機「SLIM」の展示。これは模型ではなく、実際の開発で使用された熱構造モデルと呼ばれるものだ。熱真空試験などで使われており、サイズや外観はフライトモデルとほぼ同じ。エンジンが上側の逆立ち状態で展示されており、月面に着陸した状態に近いのもポイントだ。
SLIMは2024年1月、日本初の月面着陸に成功。ノズルの破損により、予定していた着陸姿勢にはならなかったものの、誤差10m程度のピンポイント着陸を達成した。
SLIMのミッション以外のところで特筆すべきは、着陸時のオンライン中継において、詳細なテレメトリをリアルタイムで公開していたことだ。これについては、社内でも議論があったそうだが、このおかげで、着陸時に何が起きたのか、我々も推測することができた。広報の事例としては、大成功だったと思う。
またブースでは、衛星データ利用の取り組みも紹介していた。面白かったのは、衛星のデータとIoT家電のデータを融合し、災害時の状況把握ができないか、というアイデア。たとえば豪雨で洪水が発生した場合、エアコンの室外機が故障したという信号が、浸水の検知に使える可能性がある。これをうまく活用すれば、衛星データを補間できる。
そのほか、温室効果ガス・水循環観測技術衛星「GOSAT-GW」の模型も初公開。この衛星は、「いぶき」(GOSAT)シリーズや「しずく」(GCOM-W)の後継機である。今年度中にH-IIAロケットの最終号機で打ち上げることが決まっており、どうしてもロケットばかりが話題になりがちであるが、衛星側にも注目していきたい。