10月15日から18日までの4日間、デジタルイノベーションの総合展「CEATEC 2024」が幕張メッセにて開催されている。“Innovation for All”を開催テーマに掲げた同イベントは、今回が25回目の開催。一瞬も見逃すことのできない開発競争が続くAIを中心に、あらゆる業界・職種の人々にとってのイノベーションが集結している。

日立製作所は、「#あなたとつくる未来社会」をテーマにしたブースを出展。AIやメタバースを活用した現場作業者へのアシスタント技術や、インフラ設備の点検・管理効率化に貢献するソリューションなど、さまざまな技術を紹介している。

  • 日立製作所ブース

    CEATEC 2024の日立製作所ブース

メタバースの活用で現場作業者へのAI支援を実現

日立は、電力や鉄道などの大規模プロダクトの生産、およびプラントの施工や施設管理、運用保守において現場作業を行うフロントラインワーカーを支援する手段として、メタバースやAIを活用することで作業者の判断を支援するAIアシスタント技術を開発した。

  • AIアシスタント技術の展示

    AIアシスタント技術の紹介はメタバースを用いて行われた

現場での業務を日々重ねていると、さまざまな作業ナレッジが暗黙のうちに蓄積されていく。しかしこれらのナレッジは属人的なものになりがちで、作業者同士での共有を進めようにも、人手不足や多国籍化などの影響でその機会が確保されず、効果的な活用ができていない現状があるという。

そこで日立は、蓄積されたOT(物理的対象の監視・制御技術)ナレッジをメタバース上に集約することを起草。現場の設計情報としてCADや3Dスキャンのデータも収集し、メタバース空間上に再現することで、ナレッジと作業場所との照らし合わせが可能になるとする。またここにAIを組み合わせ、現場作業者に対して必要な情報提示を行うアシスタント機能を導入。これにより、暗黙知となっていたナレッジを形式知化するとしている。

さらに日立は、全身にセンサを埋め込むことで作業者の位置や姿勢を検知できる作業服も開発。これにより作業者の異常姿勢を検知したり、立ち入り禁止場所への入り込みを把握し防止したりと、より効果的なAIアシストが行えるとのことだ。

  • センサを内蔵した作業服

    全身の動きを検知するセンサを内蔵した作業服

今回のCEATECでは、メタバース上での作業アシスタント事例が紹介された。例示されたのは、低い位置に設置された室外機の部品交換作業。この時、先述した作業服も活用することで、腰に負荷がかかりやすい姿勢などを検出し、正しい姿勢の提示などに繋げられるとする。またその日の作業で発見された改善点や共有すべき事項などは、1日の作業が終わったタイミングでまとめてAIアシスタントから提示することが可能。夕礼などの機会に改めて確認し、翌日以降の作業に活かすことができるとした。

  • 作業者の姿勢についてもAIアシスタントが貢献する

    作業者の姿勢についてもAIによるアドバイスを行えるという

地中のインフラ管理DXに貢献する2つのソリューション

また日立ブースでは、地中に埋設されたインフラの管理を効率化する2つのソリューションも紹介された。

地中埋設管を3次元で見える化する「地中可視化サービス」

その1つは、地中のレーダー探査と高度画像解析を組み合わせて地中の埋設物情報を可視化するサービス。日立は高度画像解析技術を有しており、地中レーダー探査を担う応用地質と協業することで、地中可視化サービスを実現しているとする。

現在、地中の埋設管については情報量が少ないケースが多く、下水管やガス管などさまざまな配管が埋まっている中、図面上の位置と実際の埋設位置がずれているために無駄な試掘作業を要したり、図面から想定された深さと実際の位置が異なるために損傷事故が発生したりと、多くの課題が生じているという。

そうした中で地中可視化サービスでは、2種類のレーダー探査装置(車両型・手押し型)を地上で走らせることで、地中の埋設物の位置を高精度に測位することが可能。その測位情報は、日立の技術によって空洞などと共に位置情報として判別され、プラットフォーム上で広域にわたって閲覧できる形に変換されるという。また3次元のCADファイルとしても出力でき、地上からの深度や配管同士の位置関係などを、直感的に確認できるとする。

  • 地中埋設管の位置情報

    地上からの調査で得られたデータをもとに作製された地中埋設管の位置情報

水道管の漏水点検デジタル化へセンサを独自開発

さらに水道管に特化したサービスとして紹介されているのが、漏水監視サービスだ。これは、現在は人手による作業が主流となっている地中水道管の漏水について、監視センサを用いて早期発見に貢献するもの。監視センサは日立が独自に開発したものだといい、低消費電力であることから3~5年にわたって継続的に漏水監視を行えるという。

  • 水道管漏水監視センサ

    日立が独自開発した水道管漏水監視センサ

従来の検査方式では、3~5年に1回程度、作業員が水道管の制水弁などを回って音調調査を行っていたとのこと。しかし定量的な調査ではなく属人化している上、数年に1度の検査では漏水の発生を見逃すリスクも高く、人手不足なども相まってDXが求められている。

日立のサービスでは、制水弁の中にセンサを設置することでモニタリングが可能。独自のアルゴリズムによって漏水の判別を行うといい、漏水を見逃すリスクを低減できるとする。またセンサの設置方法が簡単であるため、導入へのリードタイムが短く、段階的なエリア拡張もできるなど、さまざまなメリットを提供できるとした。

AIを活用し社会課題解決にアプローチする日立製作所

また日立ブース内では、ヤングケアラーや8050問題などといった社会課題の解決に寄与する、AIを活用した相談支援ソリューションや、今後さらなる発展が期待されるドローンなどの経路管理に役立つモビリティ管制基盤「Digital Road」なども紹介。併せて、開催まで半年を切った「大阪・関西万博」のブース模型なども展示された。

  • 「大阪・関西万博」日立エリアの模型

    ブース内に展示された「大阪・関西万博」日立エリアの模型