具体的な成果が見当たらず
石破茂内閣が発足したが、肝心の政策で党内をまとめきれるかどうかが課題になる。
防衛通を自認する石破氏はアジア版NATO(北大西洋条約機構)の創設を提唱するが、実現には集団的自衛権の全面行使を容認するための憲法改正か解釈変更が必要で、膨大な政治エネルギーと時間が必要となる。
この構想に関し、総裁選では「中国を最初から排除することを念頭に置いているわけではない」と述べていたが、総裁選出後の米シンクタンクへの寄稿では「中国を西側同盟国が抑止するためにはアジア版NATOの創設が不可欠」と明言。一貫性のなさが指摘される。
憲法改正に関しては、石破氏は本来、戦力不保持を謳った9条の2項を削除し、自衛隊を「国防軍」に改めることが持論だった。総裁選では「自衛隊の明記」との党方針の踏襲を表明したが、本意ではないことは確かで、その姿勢で改憲が実現できるかどうかは見通せない。
一方、経済政策は岸田文雄前政権の路線を引き継ぐと表明。「アベノミクス」に批判的だった石破氏は分配に力点を置いた経済政策も掲げる。特に過疎化が進む地方の活性化、弱者救済のための施策を進める考えで、岸田政権の延長と言える。ただ、物価高対策、大幅な賃上げは、誰が首相であっても実施しなければならない。
岸田氏が首相就任当初に提起した金融所得課税の強化、法人税の引き上げ検討について、石破氏も言及したが、経済界の反発が根強く、岸田氏同様に軌道修正を迫られる可能性がある。
総裁選の目玉の一つだった「防災省」構想も、他の候補はいずれも慎重か反対だった。そもそも首相が政策に関して実現した具体的な成果はあまり見当たらない。防衛や安全保障に詳しいのは事実だが、「~しなければならない」「もっと議論が必要だ」といった問題提起、政権批判が目立つ。
首相を知る自民党議員は「非主流派でいた期間が長すぎて現実的な政策が見えていない」と語る。評論家然とした姿勢から脱却し、リーダーシップを発揮して果敢に決断していくのか。全ての結果は27日に下される。