TrendForceによると、現在のメモリ需要の主なけん引役はAIサーバであり、その中心となるHBMの生産拡大ニーズに沿って、サプライヤ各社は契約価格の引き上げに意欲を見せているという。

市場全体としては、一部のサーバOEMが購入意欲を見せている一方、スマートフォン(スマホ)ブランド各社は慎重な姿勢を見せていることから、TrendForceでは第4四半期のメモリ価格の上昇率は鈍化傾向となり、従来型DRAMでは前四半期比0~5%の上昇に留まると予測している。ただし、HBMの需要は高止まりしていることから、DRAM全体の伸び率は従来よりも低い同8~13%程度としている。

  • 2024年第3四半期および第4四半期のDRAM契約価格のカテゴリ別増減率

    2024年第3四半期および第4四半期のDRAM契約価格のカテゴリ別増減率(%) (出所:TrendForce、2024年10月時点の予測)

各DRAMセグメント別の動向

PC DRAMについては、第3四半期はIntelのLunar Lakeシリーズのリリース待ちという段階であり、一般的にはピークシーズンながら低調な推移に留まった。そのため、DRAM調達コストの上昇もあり、在庫処分が優先される動きがみられ、この傾向は第4四半期まで続くと予想されるという。

しかし第4四半期については、HBMの生産量増加の影響もあり、サプライヤは継続してPC DRAMの価格引き上げを図る可能性があるという。ただし、この動きはPC OEM側の在庫戦略やスポット市場の弱含みにより抑えられる可能性もあり、結果としてTrendForceでは、PC DRAMの同四半期の価格は横ばい程度と予測している。

サーバDRAMについては、第3四半期における米国のCSP(クラウドサービスプロバイダ)の在庫レベル高止まりにより調達量が減少。一方の中国市場は回復の兆しを見せているものの、全体的な需要けん引には不十分だとTrendForceでは見ており、第4四半期の平均販売価格上昇率は同0~5%ほどと予測しているが、この価格抑制によりビット出荷数全体としては改善が見込まれるとしている。

モバイルDRAMについては、第3四半期にスマホブランド各社が在庫削減に注力した結果、需要も同30%以上減少したが、TrendForceではこうしたスマホブランド側の受動的アプローチは第4四半期まで続くと見ている。また、中CXMTのLPDDR4X生産能力拡大による供給過剰懸念もあり、第4四半期の契約価格は同5~10%ほどの下落と予想している。

グラフィックスDRAMについては、第4四半期に入っても需要の低迷が続いており、グラフィックスカードメーカーからの注文は前四半期比でわずかに増加する程度のため、サプライヤ側の値上げ圧力を弱めているが、バイヤーが在庫の積み増しを続けていることもあり、第4四半期を通じて安定した価格が続くと見られるという。

そのため価格下落の兆候はすぐには見えないが、サプライヤはバイヤーの在庫レベルを絶えずチェックしている一方、同様の容量をHBMの生産に割り当てるケースが増えてきているため、サプライヤ各社はGDDRの生産計画に保守的なアプローチを採用するようになってきているという。

消費者向けDRAMについては、全体として需要の弱含みが続いており、年末が近づくにつれてバイヤーサイドがより慎重な補充戦略を採用するようになってきているという。また、消費者向けDRAMの主流であるDDR4についても、中国メーカーによる生産増加が続いており、価格下落の可能性も否定できないという。