【財務省】新総裁との微妙な距離感 税制大綱、予算編成が正念場

9月27日投開票された自民党総裁選で石破茂氏が新総裁に選出され、財務省では安堵の空気が広がった。1回目の投票で岸田文雄政権の経済安全保障担当相を務めた高市早苗氏が1位になると、外国為替市場で円が対ドルで急落するなど金融市場は動揺した。

 高市氏は総裁選の期間中に積極財政を掲げ、日銀の今春以来の利上げ方針を「あほ」と述べて批判。こうした高市氏の一連の言動に対し、財務省は「首相になればかなりやっかい」(主計局幹部)と警戒していた。決選投票で石破氏が高市氏を破り、「最悪の事態は回避された」(同)との評価だ。

 一方、石破氏は総裁選で地方創生交付金の拡充や法人税体系の見直し、金融所得課税に言及した。石破氏自身は財政規律を重視する考えを持つものの、今の財務省内に、石破氏と深い信頼関係を築いている幹部はいない。政策通を自負する石破氏は、首相になっても財務省幹部の説明や財務相に起用した加藤勝信氏の意向を「よきにはからえ」と委ねることはないだろう。

 石破氏勝利に貢献した岸田氏に配慮し、岸田氏に近く、旧大蔵省出身の木原誠二元官房副長官や財務省の宇波弘貴主計局長らが政権の経済政策に関わるだろうが、今秋と想定される衆院選と来夏の参院選を控えることもあり、この10年の財務省の仕事のあり方は変化を余儀なくされる可能性がある。

 石破氏勝利で一時、3円程度円が急騰し、9月30日の日経平均は1700円超下落して始まるなど、市場は手荒に歓迎した。長く党内で非主流派だった石破政権の一挙手一投足に、市場は当面神経質になるかもしれない。そして財務相に起用された加藤氏を市場はどう評価するか。まずは来年度の税制改正大綱や予算編成作業が首相だけでなく、財務省にとっても最初の正念場になりそうだ。

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