警察庁が発表した「令和5年における特殊詐欺の認知・検挙状況等」によれば、令和5年の特殊詐欺(注1)の認知件数は1万9,038件で前年比8.4%増、被害額は452.6億円で前年比22.0%増と、件数および被害額のいずれも増加傾向にある。
(注1)特殊詐欺とは、犯人が電話やハガキ(封書)等で親族や公共機関の職員等を名乗って被害者を信じ込ませ、現金やキャッシュカードをだまし取ったり、医療費の還付金が受け取れるなどと言ってATMを操作させ、犯人の口座に送金させたりする犯罪(現金等を脅し取る恐喝や隙を見てキャッシュカード等をすり替えて盗み取る詐欺盗(窃盗)を含む。)のこと。(警視庁のWebより引用)
被害者を欺罔(ぎもう:相手に虚偽のことを信じさせ、錯誤させる)する手段として犯行の最初に用いられたツールは、電話が77.5%と、電話による欺罔が8割近くを占めている。これまでは固定電話への架電が多かったが、最近では携帯電話への詐欺電話のケースも多数あるという。そのため、特殊詐欺の被害を防ぐには、電話による欺罔対策が重要になる。
そんな中、トレンドマイクロとNTTタウンページは7月30日、トレンドマイクロが提供するセキュリティ対策サービスとタウンページに掲載している情報を連携させることで、特殊詐欺対策を強化するスマートフォン向けのセキュリティサービス「詐欺電話ブロックサービス」の提供を発表した。そこで、両者にサービスの仕組みや提供の狙い、効果について聞いた。
安心安全を届ける「詐欺電話ブロックサービス」の仕組み
「詐欺電話ブロックサービス」は、特殊詐欺の疑いがある電話番号からの着信を自動でブロックするとともに、特殊詐欺の疑いがある電話番号に発信しようとしたときは、画面に警告メッセージを出力する機能を提供する。
さらに、警告を表示してもその番号に発信した場合は、その旨が家族にも通知される。着信履歴を見て迷惑電話だと思い、わざわざ「電話しないでほしい」と伝えるために、発信したケースもあるという。
「警告を表示しても、気づかずに発信してしまうお客様もいますので、発信があったら、サポートセンターに通知が飛ぶようになっています。サポートセンターで検知すると、お客様もしくは登録いただいた家族に安全確認の電話の連絡をします」(トレンドマイクロ コンシューママーケティング部 コンシューマプロダクトマーケティンググループ シニアスペシャリスト 荻原夕貴氏)
これは、特殊詐欺の被害者に高齢者が多いためだ。
トレンドマイクロは、詐欺に利用されている電話番号を大きく2つの方法で入手しているという。1つは、警察やパートナーなど、外部から提供されるケース、もう1つは、セキュリティソフト「ウイルスバスター」で検知した事件をもとに電話番号を集めるケースだ。
近年、国際電話を使った特殊詐欺も多いことから、「詐欺電話ブロックサービス」では、国際電話による着信や発信(iOSでは発信時のみ)についても、警告を表示する。
加えて、発着信時は、タウンページに掲載された約560万件(2024年3月時点)の電話番号データベースを参照し、画面上に通話先の企業名などの登録名称も表示する。企業名等が表示されることで、詐欺の警告に加えて、利用者の安心感にもつながっている。
「タウンページに掲載された電話番号から着信があった場合、タウンページに登録している会社名や店舗名が画面上に表示されるので、お客様は、知らない電話番号だったとしても安心して電話に出ることができます」(NTTタウンページ ビジネスソリューション事業部 商品戦略部門 サービス企画担当 奥寺祥平氏)
,「詐欺電話ブロックサービス」でタウンページの情報を活用している理由について、木野氏は次のように説明した。
「信頼性の高い電話番号のデータを持っていらっしゃるのはNTTタウンページ様ということで、相談させていただきました。タウンページは誰もが知っているサービスですので、その情報を提供している点でも安心感につながると思います」
さまざまな用途で活用される「タウンページデータベース」
タウンページ情報(タウンページデータベース)は、NTT東日本・NTT西日本が発行する職業別電話帳(タウンページ)に掲載される約560万件(2024年3月時点)情報をデータベース化したもので、カーナビゲーションシステムの目的地検索でも活用されている。
タウンページ情報は、電話の新規開設や移転などの手続きで掲載の許諾がとれた電話番号がベースになっており、その情報にNTTタウンページが業種などの付加価値を付けて提供している。医者や弁護士など、資格が必要な業種は、一件ごとに資格の確認を行っているという。
例えば、タウンページ情報は、警察や消防の通信指令台システムでも利用されている。
「事件や事故などの緊急通報を通信指令台システムで受け付けたときに、タウンページ情報が発生場所を特定するための目標物として活用されています」(NTTタウンページ ビジネスソリューション事業部 商品戦略部門長 江田勝憲氏)
今後は販売チャネルの拡大を
「詐欺電話ブロックサービス」は8月1日より、一部のドコモショップで取り扱いが開始された。トレンドマイクロによれば、「詐欺電話ブロックサービス」の販売は好調だという。例えば、お盆の時期に、母親を心配した子供が契約を勧めて成約したほか、初めてスマートフォンを利用する中学生の保護者が同サービスを契約したという。
「多くのお客様に利用いただいている状況で、しっかり詐欺の電話をブロックできていると感じています」(木野氏)
ただ上述したように、同サービスの販売は現在のところ、一部のドコモショップに限られている。特殊詐欺の被害者として高齢者が多いことから、設定を含めて、ショップの店員が対応を行っている。同社としては、販売チャネルの拡大も今後検討していきたいという。
「ウイルスバスターを利用いただいているお客様も含め、より多くのお客様に提供していきたいので、家電量販店やオンラインストアなど、販売チャネルを拡大していければと考えています」(木野氏)
総合ライフポータルへリニューアルするiタウンページ
一方、NTTタウンページは、2026年3月末をもって提供を終了するタウンページの後継サービスとして、iタウンページのリニューアルを進めている。今後は、電話番号検索中心のインターネット版電話帳の機能に加え、操作性の改善や掲載情報の充実によって、地域の住民の暮らしをもっと便利にする、全国のあらゆる業種(約8,000業種)を網羅する総合ライフポータルにリニューアルするという。
「タウンページの終了後は、iタウンページの掲載情報をデータベース化したiタウンページデータベースを後継サービスとして提供する予定です。従来の掲載情報に加え、利用価値の高い情報の収集にも取り組み、また、トレンドマイクロ様とのようなアライアンスを促進することで、iタウンページデータベース利用拡大につなげ、お客様の課題解決や安心・安全な世の中の実現に貢献できればと考えています」と江田氏は語った。