仕事ができる人は必ず「数字に強い人」、数字の持つ〝クセ〟を見抜き時代を乗り切る
「毎日、各種メディアにはさまざまな数字があふれている。しかし、それらの数字をどの程度理解しているかについて、自信を持てないビジネスパーソンは多いのではないだろうか」
このような問題意識が、本書を執筆するきっかけだった。
わたしの属する経済動向分析チームは、国内最大の月次景況感調査である「TDB景気動向調査」の収集・分析・リリースを主業務としている。
執筆者たちは、日々多種多様な統計データの解読を求められている。景気の回復には何が必要か、若い世代に何を残すべきか、という問いを考えていた中で、本書のテーマはうってつけであった。
本書は、「高校生でも分かりやすく」というコンセプトのもとにまとめられている。
わたしたちは、どの視点からアプローチすべきかを繰り返し議論し、最終的に「比較」「変化(流れ)」「大きさ」「統計」「探索」「錯覚(マジック)」「意外さ」「危険信号(アラート)」「ぼんやり」「未来」といった観点から数字を理解することに落ち着いた。
これにより、基本的な理解を深めつつ、新しい視点から数字を読み解くという付加価値を提供できたのではないだろうか。
経済に関わる数字や統計にはそれぞれ〝クセ〟があり、これらの〝クセ〟を理解することで、数字や統計の適切な解釈や利用時の注意点が明確になる。
例えば、2019年に「老後2000万円不足」問題が大きな話題となったが、基礎となる統計データについて3年後のデータで再計算すると、「老後55万円不足」問題へと変わっていた。つまり、データの誤った解釈によって「2000万円不足」という数字が一人歩きする事態となってしまったのである。
こうした〝クセ〟を理解することで、結果に一喜一憂せず、自分自身の視点で情報を解釈する能力が身についてくる。
仕事ができる人は、ひとつの数字から世の中の大きな流れを読み取り、またひとつの数字からビジネスのヒントを掴み取っていくものである。
「あの人は数字に強い」と評される人は、このような特性を持つ人なのだ。
2020年から始まった新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は、世界史に残る大きな出来事であった。企業は業務のオンライン化や働き方の見直しなど、様々な変革を行ってきた。
これまでの常識が通用しなくなる可能性が高まる「不確実性の時代」において、数字の意味はこれまで以上に重要性を増している。このような時代において、安定した指針となるのは数字を読み解く力であると言えよう。