今日、日本は複雑なエネルギー転換の課題に取り組みながら、気候変動に対応しています。2023年に開催された国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)において、参加国は化石燃料の「終わりの始まり」について合意し、大幅な排出削減と資金調達の強化に支えられた、迅速かつ公平な移行に備えることになりました。また、2030年までに再生可能エネルギーを3倍に増やし、エネルギー効率を2倍に高めるという世界的な行動目標も呼びかけられました。これには、石炭エネルギーの削減や化石燃料補助金の廃止、先進国が先導して化石燃料から脱却を図ることなども含まれています。

日本のエネルギー基本政策は、「安全性(Safety)」を大前提とし、「安定供給(Energy Security)」、「経済効率性(Economic Efficiency)」、「環境適合(Environment)」を同時に実現することが重要と考えられています。東日本大震災による原発事故の経験により、安全性に対する注目は高まっており、近年では台風や豪雨による電力・燃料供給インフラの崩壊、自然災害の激化、サイバー攻撃の複雑化などにより、原子力発電のみならず他のエネルギー関連施設においても安全確保の重要性が課題となっています。

近年のグリーントランスフォーメーション(GX)とデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進による新しいデータセンター、半導体工場、AI関連設備の建設により、電力需要は増加すると予想されています。このような状況を踏まえると、日本にとって、エネルギー需要と脱炭素目標のバランスを取るために、低炭素・自然エネルギーへの取り組みを拡大することがこれまで以上に重要になっています。

  • 白煙をあげて稼働する火力発電所

    今後はこれまでのように化石燃料を用いた電力から、自然エネルギーの活用などによる脱炭素化への転換が求められる

エネルギー転換 - カーボンニュートラルの未来に向けて

持続可能なエネルギーエコシステムの構築には、技術の進歩、政策の革新、国際的なパートナーシップのバランスをとる必要があります。重要なのは、各国が可能な限り効率的にエネルギーを生産・消費する方法について考えることです。効率的なエネルギーの生産と消費は極めて重要ですが、持続可能な社会に向けては未だ道半ばにあり、消費者の負担軽減や経済成長を妨げることなく、費用対効果の高い自然エネルギー、実行可能な資金調達モデルや支援が不可欠。エネルギー安全保障、持続可能性、経済性のバランスを達成するためには、国・地域・産業を超えた協力が必要です。

アジア諸国における協力の具体例では2023年、日本と韓国が、水素やアンモニアを含むカーボンニュートラル燃料の共同供給ネットワークの構築を進めていることが報じられました。日本のアジア・ゼロエミッション共同体 (AZEC)とアジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブ (AETI)は、インドネシア・タイ・フィリピン・マレーシアの業界関係者間でアンモニア混焼に関する覚書を締結しました。また日本は、2050年ネットゼロ目標の下さまざまな取り組みを計画しており、エネルギー分野では水素・アンモニアなど新たなエネルギー源の開発・利用や再生可能エネルギーの主力電源化と導入拡大推進、産業分野では製造プロセスの脱炭素化やエネルギー効率向上が挙げられます。

一方、日本は中国と米国に次ぐ世界トップ3の製造・工業国であり、 温室効果ガス排出量削減が困難な産業は鉄鋼(39%)を筆頭に、化学(15%)、機械製造業(11%)と続きます。 燃料はタンカー輸送による液化天然ガス(LNG)、石炭、石油などの化石燃料に大きく依存しており、これらの既存のエネルギー燃料は、エネルギー転換期において二酸化炭素排出量を最小限に抑える必要があります。

多様なポートフォリオの統合と新たな顧客行動

世界の気候変動に対する目標を達成する上で、アジアは極めて重要な役割を担っています。前述のとおり、日本は2050年までのネットゼロ達成を目標として掲げており、この長期目標に向けた中期目標として、2030年度までに温室効果ガスの排出量を2013年度比で46%削減することを目指し、日本は段階的に温室効果ガスの排出削減を進めていくこととなる。

地域的な需要が急増するなか、ネットゼロエネルギーの統合は、新しい顧客と、最先端のソリューションを求める革新的なプレーヤーの両方を引き寄せ、エネルギー業界で急劇に増加する可能性を秘めています。このダイナミックな環境により、独創的なビジネスモデルや斬新な資金調達アプローチが生まれ、持続可能なエネルギーソリューションの活用を促進する原動力となると見込まれています。

  • 2050年までの達成が目指されるネットゼロ

    2050年のネットゼロ達成に向けた原動力となる技術とは