スウェーデン王立科学アカデミーは9日、2024年のノーベル化学賞を、米ワシントン大学のデビッド・ベイカー教授(62)、英グーグルディープマインド社のデミス・ハサビスCEO(48=英国籍)とジョン・ジャンパー氏(39=米国籍)の3氏に授与すると発表した。受賞理由は「計算によるタンパク質の設計」と「タンパク質の構造予測」。コンピューターと人工知能(AI)を駆使した生命科学への貢献を高く評価した。

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    ノーベル化学賞の受賞が決まった左からベイカー、ハサビス、ジャンパー氏のイラスト(ニクラス・エルメヘード氏、ノーベル財団提供)

2019年の吉野彰氏以来5年ぶりとなる、日本人の化学賞受賞はならなかった。

生命の構成要素ともいえるタンパク質は一般的に20のアミノ酸から構成される。ベイカー氏は1990年代末からアミノ酸配列をもとにタンパク質の構造を予測するコンピューターソフトウェア「ロゼッタ」の開発を始めた。2003年にはアミノ酸を組み合わせ、これまでにない新しいタンパク質を作ることに成功した。その後、医薬品からナノ材料、小型センサーまで多様なタンパク質を生み出した。

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    「ロゼッタ」でつくったタンパク質。(a)2016年:120個のタンパク質が連結したナノ粒子、(b)17年:鎮痛薬に結合したタンパク質、(c)21年:疑似インフルエンザウイルス、(d)22年:分子回転体、(e)24年:センサー素材(ノーベル財団提供)

一方、アミノ酸が連なったタンパク質は、折りたたまれて立体構造をもつことで機能する。1970年代から構造予測の試みが続いていたが困難だった。最強の囲碁ソフト「アルファ碁」を作り出したハサビス氏のAIモデルにジャンパー氏のアイデアを取り入れ、ディープマインド社が新モデル「アルファフォールド2」を2020年に発表。2億個のタンパク質の立体構造を高精度で予測した。

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    「アルファフォールド2」でアミノ酸配列からタンパク質の構造を予測するイメージ(ノーベル財団提供)

一連の成果に対しノーベル財団は「タンパク質の構造を予測し、独自のタンパク質を作ることができるようになったことは人類にとって最大の利益だ」とたたえた。

賞金計1100万スウェーデン・クローナ(約1億6000万円)をベイカー氏に2分の1、ハサビス、ジャンパー両氏に4分の1ずつ贈る。授賞式は12月10日にスウェーデンで開かれる。

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