SAPジャパンは10月10日、年次イベント「SAP TechEd」で行われた発表に関する説明会を開催した。SAP Asia Pacific Japan プレジデント ポール・マリオット氏は、「日本はテクノロジーの採用率が低いが、生成AIは日本にとって、企業の規模を問わずチャンスとなる。AIを受け入れて生産性を向上することで、再び成長軌道に乗り、イネーブラーとなれる」と、日本におけるAIの可能性の高さをアピールした。

  • SAP Asia Pacific Japan プレジデント ポール・マリオット氏

またマリオット氏は、「日本は高齢化が進んでいるので、テクノロジーを活用して 自動化を進めて生産性を向上しないと、GDPが伸びない。われわれは責任を持って、国のレベルで成長できるように支援したい」とも述べた。

そして、「われわれの目標はシンプル。価値を出すための時間を短縮すること、生成AIを使ってイノベーションを起こすこと」とマリオット氏は語った。

Jouleの強化:コラボレーション AI エージェント導入

続いて、SAP Business Technology Platform担当エグゼクティブバイスプレジデント兼最高製品責任者 マイケル・アメリング氏が、「SAP TechEd」で行われた発表について、3つの柱に分けて説明した。

  • SAP Business Technology Platform担当エグゼクティブバイスプレジデント兼最高製品責任者 マイケル・アメリング氏

1つ目の柱は「Jouleの強化」だ。アメリング氏は、Jouleの強化について、「すべてのプロダクトライン製品に統合し、新しいエクスピリエンスを可能にしている。今回、SAPの使用頻度の高いビジネスタスクの80%をカバーでるよう、機能拡張が行われたが、ここで止まるわけではない」と語った。

同社はビジネス機能全体にわたる独自の専門知識を組み合わせて、複雑なワークフローを協働で達成する複数のコラボレーションAIエージェントをJouleに組み込んだ。

これらのAIエージェントはサイロ化を解消しながら、従業員が人間の創意工夫が生きる分野に集中できるようにすることで、大幅な生産性向上を支援するという。

データの活用:SAP Knowledge Graph提供

2つ目の柱は「データの活用」だ。データとAIは切っても切れない関係にある。アメリング氏は「データの価値を最大化したい」と語り、それを実現するための機能拡張を紹介した。

具体的には、SAP AI Coreにナレッジグラフ機能を導入するため、2025年第1四半期にSAP DatasphereとJouleを通じて、SAP Knowledge Graphを提供する。同製品は、SAP S/4HANAのデータにセマンティックレイヤーを追加することで、ABAPテーブルやSAP Fioriアプリケーションにビジネスコンテキストを与え、データの価値を最大化する。

アメリング氏によると、Knowledge Graphは45万件のテーブル、8万のコアデータサービスビューによって回答を出しているという。

また、SAP Knowledge Graphは、発注書、請求書、顧客などのビジネスエンティティ間の関係をすぐに利用できるようにすることで、手作業によるデータモデリングの複雑性を軽減する。

AI開発者向けの強化:SAP Buildでの開発を促進

3つ目の柱が「開発者向けの強化」だ。SAP TechEdでは、さまざまな機能拡張が発表された。

まず、開発プラットフォーム「SAP Build」に、コード説明やドキュメント検索といった生成AI開発者向け機能が追加される。アメリング氏は「SAP BuildにAIが入ると、開発者はJuleにコードの意味を聞けるようになり、コンテキストを探さなくても提供してもらえるようになる」と説明した。

SAP Buildは、開発や拡張の機能を統合し、ABAP Cloudにも対応する。これにより、SAP BuildからABAP Cloudプロジェクトを作成・管理することが可能になる。

加えて、「SAP Build」に拡張ウィザード機能が追加され、開発者はSAP S/4HANA Cloud Public Editionから直接SAP Buildにアクセスできるようになり、拡張作業が簡素化される。

さらに、アメリング氏は、「企業はさまざまなシステムを使っているので、それらの管理・連携を行ってくれるオーケストレーターが必要」と述べた。そのため、同社はAIを搭載した「SAP Integration Suite」を提供している。

同製品では、2025年上半期より、AIが生成した提案によりインテグレーションスクリプトが最適化されるほか、Anaplan、Coupa、HubSpot、NetSuite ERP、Snowflake用のアダプタが追加されるという。

アメリング氏は、SAP Analytics Cloud Compassにおいて、2025年第2四半期に、モンテカルロ・シミュレーションによるリスクシナリオのモデリングを可能にし、意思決定を支援することも紹介した。