Preferred Networks(PFN)は10月9日、都内で記者説明会を開き、リテールソリューション事業を立ち上げ、第1弾としてDX(デジタルトランスフォーメーション)・AI・ロボット技術を組み合わせたチェーンストア向け業務改善ソリューション「MiseMise(ミセミセ)」の提供を開始した。
リテールソリューションを主力事業に位置付け
これまで、PFNではAI技術のバリューチェーンを垂直統合して産業、コンシューマ、社会に向けて、さまざまな領域でソリューション・製品を水平展開してきた。
こうした前提を踏まえ、PFN 代表取締役最高経営責任者の西川徹氏は「IT、AIの力で従来のプロジェクトを鑑みると効率化でき、ITを取り込める可能性がある。AIの発展がリテール分野に発展でき、主力事業の1つに位置付けるためリテールソリューションの発表に至った」と述べた。
同社によると、小売業界では少子高齢化や人件費高騰の影響を受け、人手不足が慢性化しており、パート・アルバイトも限られた時間しか働けないため、人材育成のための時間がとれないケースが発生しているという。
対策として、スポットバイトサービスを利用しても経験不足で業務が困難、自動発注システムを導入しても品切れなどの問題が解決できないといった状況も見られているほか、物流2024問題で納品回数の減少により、売り場での欠品や品不足による販売機会の損失に対して、従来以上に工夫が必要されているとのこと。
こうした状況をふまえ、PFN SVP 最高マーケティング責任者の富永朋信氏は「各従業員の業務は一人ひとりの中で完結してしまっているので、どのように動いたら効率的だったり、他のひとのやり方を見なったり、自分のノウハウを共有したりすることで進まない状況がある」と指摘している。
5つのリテールソリューション
今回、同社が提供を開始するMiseMiseは、これらの課題を解決するため「MiseMise 品出し」に加え、β版で「同AI値引き」「同棚割」「同ロボット」「同分析」の5つのソリューションを提供する。
品出しは、経験の有無にかかわらず誰にでも簡単で効率的な品出しを可能にするソリューション。バックルーム(店内の在庫置き場)の在庫をデータ化することにより、欠品商品の値札をスキャンするだけで在庫の場所をリアルタイムで業務端末に表示する。これにより、バックルームでのピッキング時間を50%削減、店頭の品切れ防止による売り上げが4.2%増加、バックルームの余剰在庫が1カ月で20%削減できるという。
AI値引きは、消費期限の短い生鮮食品や惣菜などを売り切り、食品ロスを削減するために最適な値引き額を提示するソリューション。AIが天気などの外部情報や現在庫情報、他商品の在庫情報から需要の食い合いまでを予測し、経験に左右されない値引き判断をサポート。
棚割は商品部での棚割の作成、各店舗への配信から分析まで、棚割に関わるすべての業務を組織横断で行うためのソリューション。販売実績と棚割データを組み合わせた分析や、AIがバイヤーの方針も加味した棚割の提案で、売り上げの向上につながる棚割の実現をサポートするという。
ロボットは、自律移動ロボットが店内を自動撮影し、欠品や品薄を検知しながら棚割の実施状況を確認して他ソリューションと連携し、値札の付け間違いのチェックや来店客への売場案内、万引きの抑止や商品プロモーションなどの使い方も可能としている。以下はデモ動画。
分析は上記4つのソリューションのデータを統括し、店舗DXに必要な情報を一元管理。作業が割り当て通りに実行できているか、各種店舗情報(滞留在庫量・品切頻度・品出し必要頻度)、店舗間の作業効率などを分析するAIダッシュボード機能を備えている。
PFN リテール担当VPの海野裕也氏は、新ソリューションについて「社歴1日でも誰もがベテランになれるチェーンストア向けのが要務改善ソリューション。当社が得意とするAIやロボットなどの技術を組み合わせたソリューションとなっており、チェーンストアの経営全体を支援する」と話す。なお、売上目標は初年度に10億円、3年後には100億円を計画している。
チェーンストアが新ソリューションを導入することで、業務経験のないパート・アルバイトでも最小限の指示で熟練者のように効率よく業務を遂行することが可能となり、売り上げや利益、従業員満足度の向上や欠品率・ロス率の低下につなげることができるという。 すでに、MiseMise 品出しを導入した北東北3県にスーパーマーケットを転嫁薄rユニバースでは、バックルームにどこにどの商品があるか誰でもすぐにわかるようになり、バックルーム在庫や補充作業の実態をデータで把握できるようになったとのこと。
データを活用することで、商品の補充回数を減らし、品出しに関連する作業を1日平均 5時間削減したほか、バックルームに滞留している在庫を把握して2カ月で最大50%の在庫削減につながったという。