総務省は、NHKのラジオ国際放送の中国語ニュースで中国籍の外部スタッフが沖縄県の尖閣諸島を「中国の領土」と発言した問題を受け、NHKに文書で注意する行政指導を行った。
松本剛明総務相は記者会見で「尖閣諸島がわが国固有の領土であることは、歴史的にも国際法上も明らか。当該事案の原稿にない発言も、わが国の立場とは全く相入れないものだ」と強調。NHKに対し「国際放送を担う公共放送としての使命を深く認識し、放送法、番組基準などの順守はもとより、再発防止に取り組んでもらいたい」と要請した。
放送法は「放送事業者は番組基準に従って編集しなければならない」と規定。NHKも「わが国の国際問題に対する公的見解を正しく伝える」との国際番組基準を設けており、総務省は今回の問題が放送法の規定に抵触すると判断。NHKは、「再発防止策を確実に行うとともに、説明責任を果たしながら視聴者・国民から負託された公共放送の使命を果たす」とのコメントを発表。これに先立ち、国際放送担当の傍田賢治理事が辞任し、稲葉延雄会長や井上樹彦副会長ら4人の役員は報酬の50%を1カ月、自主返納する処分も決めた。
不適切発言があったのは8月19日のラジオ国際放送。中国籍の外部スタッフが、英語で靖国神社で落書きが見つかった器物損壊事件を報じる際に、尖閣諸島を「中国の領土」と発言したり、「南京大虐殺を忘れるな。慰安婦を忘れるな。731部隊を忘れるな」などと原稿にない発言を加えたりした。
NHKが公表した調査結果によると、このスタッフとは2002年、NHKの関連団体が委託契約を締結。これまでも処遇の不満を漏らすことや、尖閣諸島を例に翻訳業務を拒否できるか尋ねることがあったという。スタッフとの契約はすでに解除し、その後、NHKが損害賠償を求める訴訟を起こした。