エイベックスは、博報堂と音声AR事業で連携し、新サービス「SARF+」(サーフプラス)を本格的に提供開始。第一弾として、10月開催の「LDH LIVE-EXPO 2024」と連動するかたちで導入し、LDHアーティストのプレミアム音声コンテンツを大阪の地下鉄で期間限定で楽しめるようにする。

  • エイベックスと博報堂が音声AR事業で連携。現行の音声ARサービスを新たに強化した「SARF+」(サーフプラス)を本格的に提供開始へ

  • ユーザー向け「SARF」アプリでの音声ARコンテンツ聴取イメージ。奥は、コンテンツ配信のためにユーザーの位置情報を把握する小型ビーコン

エイベックス・アライアンス&パートナーズが10月8日に発表したもの。2021年から同社が展開している「SARF」を強化するかたちで、コンテンツIPを組み合わせた音声ARコンテンツの企画制作からマネタイズまで一貫して運用できる新サービスとしてSARF+を提供していく。

音声ARは、街中や観光地といった場所の位置情報と、音楽やアナウンスといった音声情報を組み合わせ、日常の新しい楽しみ方や新しい体験を演出するソリューション。エイベックスが提供するSARFではこれまでにも、地域の街歩き企画やインバウンド向けの観光ガイド、音声謎解き、肝試しといったさまざまな音声ARコンテンツを多数制作し、自社アプリ上で提供してきた。

  • SARFアプリの実際の画面

  • iPhone用アプリをApp Storeで配信中。Google Playストアでも、Androidデバイス用アプリを提供している

エイベックスグループでは、アーティストやタレント、ライブイベント、アニメなどさまざまなコンテンツIPを保有し、音声ARコンテンツの制作、プラットフォーム開発、運用に関するノウハウとツールを保有。また、博報堂グループでは、営業・企画プランニング、マーケティングに関するリソースとノウハウを持っている。

今回の事業連携では両者の強みを組み合わせ、統合的な音声ARサービスとしてSARF+を立ち上げることで、企業や自治体の課題解決に寄り添う音声ARコンテンツの企画・制作から、マーケティングやマネタイズまで、一気通貫で運用できる仕組み構築をめざすという。

  • 報道陣向けの説明会で展示していた、音声AR用の小型ビーコン。内蔵電池で動作するもので、展示デモでは3つのコンテンツで計3台使っていた(ひとつのコンテンツにつき1台利用)

  • スマホのGPS情報を元に、街中の特定のポイントで音声ARを配信するといった使い方もできる。画面はSARFのCMS(コンテンツ管理システム)

具体的には、従来の音声ARコンテンツの制作に加え、コンテンツのマネタイズ(課金機能)や、利用者情報の分析(マーケティング機能)、アーティスト、タレント、声優などの自社IPを起用したPR・イベントプロモーション、インバウンド施策など、音声ARコンテンツを軸とした、企業価値の最大化、オーバーツーリズムなどの観光課題の解決、地域のにぎわい創出を行う。

ほかにも、脚本家や演出家など、さまざまなクリエイターとIPを組み合わせ、地域や大型施設を舞台した大規模なフィールドエンタテインメントコンテンツの企画・制作なども行っていく。

  • ワン・パブリッシングと連動した地方創生コンテンツの展開事例として、ミステリーマガジン「ムー」の世界観で地域を周遊する音声AR企画を2025年に開始予定

  • 他社とのパートナー構築の事例。雑誌や小説、地域とSARFをかけあわせ、さまざまなコンテンツクリエイターと音声ARを活用した新しいコンテンツカテゴリーを開拓することをめざす

従来のSARFの機能は、新しいSARF+でも継承している。大きな違いとしては、SARF+には新たに「課金機能」や「利用者情報の分析」、「プロモーション連動」の3つを追加。担当者の説明によると、こうした新たな機能を実装することによって、たとえば音楽アーティストのデジタルグッズや、イベントの物販クーポンなどをユーザーが入手できるようにすることを考えているという。ちなみに課金機能では、設定できる金額には上限はないそうで、コンテンツにもよるが“数百円程度”で設定されることが多くなると見ているそうだ。

また現段階で具体的に決まっているものはないが、SARF+の活用案として「特定の店舗などに来た来場者に、音楽アーティストの未発表楽曲をSARFアプリ上で聴いてもらう」といった使い方も考えているとのこと。

  • SARF+は、従来のSARFで提供してきた音声AR制作・運用に関する基本機能や付加機能に、「利用者情報の分析」や「プロモーション連動」、オリジナルコンテンツの「課金機能」などを新たに加えたものとなる

第1弾として前出の通り、「LDH LIVE-EXPO 2024」に連動するかたちでSARF+を導入。Osaka Metroの複数の駅に音声ARスポットを設置し、LDHアーティストのプレミアムな音声コンテンツ「LDH LIVE-EXPO SOUND STATION」を、10月11日〜27日までの期間限定で楽しめるようにする

  • Osaka Metroの8駅で、LDHのメンバー計21人の特別音声コンテンツが楽しめるスタンプラリー形式の新企画を10月11日〜27日までの期間限定で実施

同企画では、SARFアプリを使いながら駅構内(改札外)に設置した音声ARスポットを巡ることで、LDHアーティストが「個人的LDH BEST HITの魅力」をそれぞれ語るプレミアム音声コンテンツを視聴できる。8スポットに計21人のアーティストの音声コンテンツを設置し、すべてのコンテンツを再生すると、同企画オリジナルデザインのスマートフォン専用壁紙をプレゼントする。

音声ARスポットを設置するのは、なんば駅(御堂筋線・四つ橋線・千日前線)など、Osaka Metroの計8駅。人流にも配慮しながら音声ARスポットを配することで、地下通路内での滞留などが起きないよう配慮するそうだ。なお、今回のLDHと組んだ企画は“音声ARのSARFというサービスのさらなる認知拡大”をねらいとしており、SARFの従来機能は利用しているが、課金機能などSARF+で実装した新機能をフル活用したものではないとのこと。

エイベックスでは同企画をはじめ、他のコンテンツIPやイベントでも順次展開を予定。今後、さまざまな企業や自治体の集客・販促施策として、インバウンドや大規模施設へSARF+を導入していくことで、音声ARのさらなる普及促進を行っていく。