電通デジタルは9月25日、同社のコマース支援事業にAIを掛け合わせることで創出される新たな購買体験とその事業戦略について説明する「コマース支援事業におけるAI活用プロジェクト説明会」を開催した。

説明会には電通デジタル コマースマーケティング部門 部門長の永山悟氏、データ&AI部門プロダクトマネジメント事業部の地元昇太氏が登壇した。

EC事業はマーケティングの「総合格闘技」

最初に登壇した永山氏は、「電通デジタルとコマース支援事業」というテーマで、同社のコマース事業への取り組みを説明した。

電通デジタルは、クライアント企業と社会・経済の変革と成長にコミットする総合デジタルファームとして、「デジタルマーケティング」「DXコンサルティング」「クリエイティブ(企画制作)」といった複数の領域で事業展開を行っている。

そのような数多くの領域の中でも、今回主題となっている「コマースマーケティング」については、「狭くて便利な日本の独自進化」という視点のもと、実店舗を含めた「購買のデジタル化」に着目している。

「コマースという領域を定義する時に、『EC(Electronic Commerce)』のみで考えるのではなく、実店舗を含めた実購買のデジタル化全体を捉えることが日本のマーケットを見る上で重要だと思っています。そのため弊社では、ECに加えて『リアルコマース』という言葉を使って、実店舗における購買自体のデジタル化を推進しています。このように購買データを活用することにより、豊かなCX(カスタマーエクスペリエンス)を提供できるのではないかと考えています」(永山氏)

  • 電通デジタル コマースマーケティング部門 部門長の永山悟氏

    電通デジタル コマースマーケティング部門 部門長の永山悟氏

そのため電通デジタルでは、自社ECやモールECの支援に加えて、CRM(顧客関係管理)・デジタル販促・リテールメディアといった領域を統合することで顧客に対するサービス提供を行っているというという。

そして今回、AIを活用した新たな購買体験を創出するプロジェクト「Commerce AI Lab.」を本格的に始動することを発表した。

  • Commerce AI Lab.のロゴ

    Commerce AI Lab.のロゴ

「EC事業はマーケティングの『総合格闘技』です。戦略策定、MD(マーチャンダイジング)戦略、体験設計、EC構築、カスタマーサポート、フルフィルメントといった多様な担当者の業務判断をAIで支援できるのではないかと考えました。社内でもAI活用を支援する準備は整ってきており、クライアント企業のマーケティング戦略において、AIを活用したマーケティングソリューションブランド『∞AI』をはじめとする、新たな価値を創造するためのさまざまなAIソリューションを提供しています」(永山氏)

「Commerce AI Lab.」4つの取り組み

今回発表された「Commerce AI Lab.」は、電通デジタルの知見を掛け合わせた複数の取り組みを通し、EC担当者の業務を効率的かつ迅速にサポートすることに留まらず、顧客1人ひとりに沿った最適な購買体験創出と新たな価値創造を提供するための取り組み。

現在は「対話型コマース」「商品DNA作成」「AIペルソナ」「対話型レビュー作成」という4つの取り組みを行っている。

対話型コマース

ECサイト上において、AIチャットとの対話を重ねることで顧客の潜在的なニーズを引き出し、パーソナライズされた購買体験を提供するもの。また、チャット記録を通して顧客インサイトを含めたさまざまな情報を収集し、今後の事業戦略に活用することが可能。

ユーザーの潜在欲求を引き出し、欲しいという気持ちを創出する取り組みで、説明会では、20代からの薄毛予防に対する質問に関してのデモンストレーションが行われていたように、「リアルでは相談しにくい悩みもAIには話しやすい」という特性が活用されている。

  • 対話型コマースのデモンストレーション

    対話型コマースのデモンストレーション

商品DNA作成

商品の基本情報に加えて、過去の顧客レビューなどをもとにAIが顧客の求める商品情報を新たに作成し、より顧客それぞれの好みに合った選択肢で商品を選べるようレコメンド機能を使った情報提供を行う。

  • 商品DNA作成の使用イメージ

    商品DNA作成の使用イメージ

また、レコメンドされた衣類などの商品はECサイト上でバーチャル試着することもでき、実店舗と同様に納得して購入することが可能となっている。

  • バーチャル試着のイメージ

    バーチャル試着のイメージ

AIペルソナ作成

電通グループ独自の大規模調査データの活用によってAIペルソナを作成し、そのペルソナと対話を重ねることで、ターゲット層に響くような商品・サービスや事業戦略のアイデアの創出を短期間かつ低コストで実現する。

  • AIペルソナ作成のイメージ

    AIペルソナ作成のイメージ

対話型レビュー生成

商品購入後のレビュー作成において、レビュー生成AIとの対話を通じた情報収集をもとに、レビュー生成からECサイトへのレビュー投稿までの一連の作業をすべてAI活用で実施する。高品質なレビューを簡単かつ大量に生成することで、顧客の購買意思決定をサポート。

  • 対話型レビュー生成のイメージ

    対話型レビュー生成のイメージ

そのほかにも、同プロジェクトでは、国内外のプラットフォーマーやクライアント企業との協業を行うなど、さまざまな取り組みの実施を随時、企画・検討しているという。

今後も電通デジタルは、企業の抱えるコマースマーケティングの事業課題の解決に向けて、最適なAI活用施策を創出し、豊かな顧客体験実現を通した企業の事業成長に貢献していきたい考え。