広島大学は9月24日、広島大病院 脳神経内科へ入院した247人の急性期脳梗塞患者に口腔総合診療科にて8項目からなる「修正口腔アセスメント評価」を用いて口腔内の状態を確認したところ、修正口腔アセスメント評価スコアが高い(口腔状態が不良な)患者ほど、3か月後の機能予後不良と関連し、院内肺炎の発症リスクが高いことが判明したと発表した。

同成果は、広島大大学院 医系科学研究科 脳神経内科学の江藤太大学院生(現・広島市立広島市民病院 脳神経内科所属)、同・祢津智久講師らの研究チームによるもの。詳細は、口腔医学と顎顔面に関する科学の全般を扱う学術誌「Clinical Oral Investigations」に掲載された。

  • 修正口腔アセスメント評価

    修正口腔アセスメント評価(原著をもとに著者が和文に修正した画像)(出所:広島大プレスリリースPDF)

口腔ケアは、脳卒中患者の肺炎予防や摂食嚥下機能の改善において重要であることが知られている。しかし、多面的な口腔状態の評価を行うことと、脳卒中発症後の機能予後や院内肺炎との関連を調査した研究は少なかったとする。そうした中で広島大病院では、脳卒中患者が入院した際に口腔総合診療科へほぼ全例紹介し、概ね3日以内に8つのカテゴリー(唇、舌、舌苔、唾液、粘膜、歯肉、口腔衛生、うがい)からなる修正口腔アセスメント評価を用いて口腔内の状態を確認しているという。その内容は、8つのカテゴリーについて、各項目を0~3点で評価し、合計0~24点で急性期脳梗塞患者の入院時の口腔内環境を評価するというものだ。点数が高いほど、口腔内環境が不良であることを表すとし、分析の結果、以下の4つの知見が得られたとした。

まず1つ目は、高齢、入院前の「modified Rankin Scale」スコア(脳卒中患者の機能的転帰を評価するための尺度で、0(症状なし)~6(死亡)までの7段階で、患者の日常生活における自立度を測定するもの)が高いこと、慢性心不全の存在、入院時の「National Institute of Health Stroke Scale」スコア(脳卒中の重症度を評価するための標準化された尺度で、意識レベル、言語機能、運動機能など複数の項目を0~40点の間で点数化し、脳卒中の程度を定量的に表すもの)が高いことが、修正口腔アセスメント評価スコアの上昇(口腔状態の悪化)と関連していたという。

2つ目は、修正口腔アセスメント評価スコアが1ポイント増加するごとに、3か月後の機能予後不良(modified Rankin Scaleスコア3以上で何らかの介護が必要な割合)のリスクが、1.31倍、院内肺炎の発症リスクが1.21倍増加することが明らかになったとした。

そして3つ目は、機能予後不良を予測する修正口腔アセスメント評価のカットオフ値は7点(リスク4.26倍)、院内肺炎発症を予測するカットオフ値は8点(リスク7.89倍)であることが示されたとする。

最後の4つ目は、入院中に2回目の修正口腔アセスメント評価を受けた患者(全体の66.0%)では、初回評価時と比較して口腔状態の改善が見られたとした。

今回の研究成果により、急性期脳梗塞患者が入院した際には、早期から包括的な口腔アセスメントを行うことの重要性が示されたとしている。

修正口腔アセスメント評価を用いた口腔評価は脳卒中以外の他疾患を有する患者でも使用されており、今後、それぞれの疾患に応じたハイリスク患者を早期に指摘し、より効果的な口腔ケア介入プログラムにつなげることが期待されるという。また、多職種連携による口腔ケアシステムの構築や、長期的な予後との関連を調査する研究が、今後求められるとしている。