タイコエレクトロニクスジャパンは9月20日、2024年10月1日付で社名を「TE Connectivity Japan」へと変更するのに併せる形で事業戦略説明会を開催。新社名へと変更後の日本法人としての方向性や、今後の注力分野などについての説明を行った。

  • TE Connectivity Japan

    左から日本/ASEAN地域 オートモーティブ事業部 営業&マーケティング本部 本部長の木村英史氏、インダストリアル ソリューションズ事業本部長 兼 インダストリアル事業部 セールス&マーケティング本部長の酒井美奈氏、代表取締役社長/職務執行者 兼 日本/ASEAN地域 オートモーティブ事業部VP&GMの鶴山修司氏、コミュニケーションズ ソリューションズ事業本部長 兼 データ&デバイス事業部 アドバンスドテクノロジー シニアディレクターの白井浩史氏、HR統括部長の雨宮將起氏

同社代表取締役社長/職務執行者 兼 日本/ASEAN地域オートモーティブ事業部 VP&GMの鶴山修司氏は、「日本でも65年以上にわたって事業を展開してきた。日本ならではのものづくりの精神を持って、信頼性の高い製品の提供も、国内に工場を構えることで実現し、日本の産業の発展を支えることを使命としてきた」とこれまでの日本での事業を振り返りつつ、「社名の変更は、今後も進化を続け、グローバルな視点で事業を展開していくことを示すもの。新たな社名には、我々の使命である『つなぐ』という思いを込めている。そのつなぐものとしても、世界中の人々とテクノロジー、そして未来へと続く可能性である」と、新社名に込められた意味を説明。併せて社名変更に伴って掲げた以下の3つの目標を示した。

  1. グローバルブランドであるTE Connectivityへの名称統一とブランド力の強化
  2. 持続可能な社会への貢献
  3. 多種多様なグローバル人材の獲得につながる職場環境の構築
  • 日本法人の概要

    日本法人の概要。65年以上前に設立されて以降、日本でも工場を構え、開発を含めた製品づくりも展開してきた

  • 社名変更に併せて掲げた3つの目標

    社名変更に併せて掲げた3つの目標

社名の変更とともに会社としての変革も推進。中でも「従業員の成長と働き甲斐のある環境の構築にも注力」しているとのことで、そうした環境を整えることで、「社員の能力を最大限に引き出し、ともに未来を切り開いていけるようにすることで、世界をリードし続けることを目指す」とする。

  • 事業を成長させるのは人である

    事業を成長させるのは人であるということを念頭に、イノベーションを生み出せる職場環境づくりを推進しているという

3つの市場に注力

同社は主に以下の3つの市場の発展に貢献することを通じて、その先にある持続可能な社会の実現につなげていきたいとする。

  1. 自動車・Eモビリティ
  2. 次世代ものづくり
  3. クラウド/AI

中でもモビリティ分野は、気候変動対策として各国がモビリティに対する環境規制の強化を進めており、すでに先行する欧州や中国では、Eモビリティの効率化ニーズの高まりを踏まえ、電気自動車(EV)の800V化への動きがみられており、日本でも800V化ニーズへの対応支援などを展開していきたいとする。

  • 車載製品の生産拠点と研究開発拠点の分散状況

    車載製品の生産拠点と研究開発拠点の分散状況。日本にも両方の拠点が設けられている。説明者は日本/ASEAN地域 オートモーティブ事業部 営業&マーケティング本部 本部長の木村英史氏

  • 自動車市場向け主要製品

    同社の自動車市場向け主要製品

また、ものづくり分野としては人手不足からの省人化・無人化ニーズの高まりを受けた産業用ロボットの適用分野の拡大や自動搬送ロボットの活用など、それらのロボットへの電力供給や工場での蓄電なども含め、多種多様な電子機器を接続させるための小型化、省スペース化、大電力化など、さまざまなニーズに沿ったソリューションを提供していくとする。

  • ものづくり分野に対するプロセス

    日本で開発・製造ができるという強みを生かしたものづくり分野に対する同社のプロセス。日本発の製品も多々グローバルに提供しているという

クラウド/AI関連、特にAIの活用は、これまでITとは縁遠かった分野でも進められており、市場としての成長も期待されている。そうしたクラウドやAIの進化には、高速通信の実現が不可欠で、かつ演算処理やデータ通信にかかるエネルギーの効率を最大化することが求められており、同社でも112Gbps対応のI/Oコネクタやケーブルアセンブリの提供などを進めているとするほか、次世代の224Gbps対応製品のサンプル出荷も開始。「224Gbps製品は試作段階だが、高度で精密な製品製造技術が必要。日本が培ってきた精密技術を活かして、高精度な寸法精度が必要なソリューションを提供していくほか、大電力に対応できるバスバーなども含め、トータルニーズに対応できる製品を提供していく」(同社データ&デバイス事業部アドバンスドテクノロジー シニアディレクターの白井浩史氏)と、日本で培ってきた技術力が重要になることを強調する。

  • クラウド/AIのトレンドと同社の対応状況

    クラウド/AIのトレンドと同社の対応状況。説明者は同社データ&デバイス事業部アドバンスドテクノロジー シニアディレクターの白井浩史氏

人ありきのビジネスを推進

同社HR統括部長の雨宮將起氏は、「グローバルで約8万5000人の従業員がいるが、世界を前進させ、顧客の成長に貢献していくためには、そうした従業員の成長が重要になってくる。各自が持っている能力を発揮できないといけない。そのために『イノベーションの促進』『インクルージョン』『成長、キャリアの促進』という3つの柱を掲げて、事業を推進している」と、事業の成長には従業員の努力があってこそとし、さまざまな環境整備をを通じて働きやすい環境づくりを推進しているとする。

  • TE Connectivity Japanのコアスローガン

    TE Connectivity Japanのコアスローガンと、その実現に向けた3つの柱。説明者はHR統括部長の雨宮將起氏

また、この3つの柱に加えて「ウェルビーイング」も重要だとする。「職場の安全と社員の健康をどうやって構築していくか」ということを念頭に、川崎の本社ならびに掛川工場に設置されているカフェテリアで提供する食事を栄養バランスを意識したものに変更したり、授乳室など女性が働きやすい職場環境の整備なども進めているという。「(カフェテリアのメニューの充実など)見えにくいところでも変革が進んでいる。人の成長だけでなく、ウェルビーイングなども含めて、各組織や人事もそうだが、グローバルとしてのつながりが強くなっており、従業員の健康問題などはグローバルで同じ考え方を持っている。そうしたグローバルとの一体化が進められているが、今後もそうした取り組みは進めて行こうという流れが、今回の社名変更で起こると思っている」(鶴山氏)とのことで、海外でうまくいっているという取り組みを人事的な関連から社内に取り入れてみたり、といったことも可能性として考えられるという。

「成長戦略としては、TE Connectivity Japanがどのように変化をもたらすのかというよりも、我々だけではなく、パートナーや顧客と一緒に成長していく」と、社名変更後の同社の方向性を鶴山氏は示唆したほか、「これまで目に見えない部分の製品を提供してきたが、EVの充電インレットなど、エンドユーザーが直接手に触れて、利用する部分でも存在感を増していくことで、ブランドとして、一般消費者にとってもなじみの深い会社になっていける可能性がある。こうした変化を社名の変更を機に感じてもらいたい」と、今後の会社としての事業の在り方そのものも変化していく可能性にも言及。TE Connectivityという1つのグローバル企業として、人を活かす環境を整え、常に成長を目指して新しいことに挑戦していくことを推進していきたいとしている。

  • さまざまな国・地域に併せたEV向け充電インレット

    さまざまな国・地域に併せたEV向け充電インレット。この製品に限らず、基本的な同社のスタンスとして、コア技術は共通化を図り、量産性を高め、低コストで安全なものを提供する土壌を形成しつつ、その上に各国・地域の顧客や法規制などの状況に応じたローカライズを加え、付加価値を生み出していくという方向性を打ち出しているという