IoT化を実現するパッケージソリューションを提供しているMODEは9月5日、日本支店設立7周年を記念して、プライベートイベント「MODE CHANGE “AI-driven IoT -社会実装を加速する-”」を東京・有楽町で開催した。

  • 午前中の講演には、CEO/Co-Founderである上田学氏(左)とCTO/Co-FounderのEthan Kan氏(右)がそろって登壇

    午前中の講演には、CEO/Co-Founderである上田学氏(左)とCTO/Co-FounderのEthan Kan氏(右)がそろって登壇

同イベントでは、CEO/Co-Founderである上田学氏が基調講演を行ったほか、CTO/Co-FounderのEthan Kan氏による「BizStack」のアーキテクチャに関する解説、プロダクトマネージャー渡邊飛雄馬氏による提供予定のBizStackの新機能に関する説明が行われた。また、パートナーによるスペシャルセッションや展示ブースも設けられ、活用事例や最新センサーが紹介された。

  • 展示ブースには、多くのパートナーがソリューションを展示。にぎわっていた

  • 展示ブースには、BizStackで利用できるセンサーを数多く展示

    展示ブースには、BizStackで利用できるセンサーを数多く展示。

「AI-driven IoT」がもたらすメリットとは

上田氏の基調講演は「AI-driven IoT- 社会実装を加速する-」というタイトルの下、行われた。同氏は講演で、生成AIの登場は新産業革命にあたり、今後、日本が直面する労働人口不足を解決する切り札になると指摘した。

「最初の産業革命で生産性は2倍、3倍にもなったが、新産業革命である生成AIを使うことにより、生産性も同じように高まる」と同氏。一方で、日本では解決すべき問題として、労働人口の減少がある。労働人口は2005年をピークに、50年の間に約3,500万人減少するが、これは、今の1.7倍の仕事をしないといけないことを意味する。

そこで、「生成AIを使えば1.7倍働かなくても、解決できると考えている」と上田氏は述べた。働き手不足解決の切り札となるのが「AI-driven IoT」だという。

「IoTは今まで、いろいろなセンサーやカメラを活用して、現場を理解していこうというテクノロジーでした。これに対し、生成AIという頭脳が組み合わさることで、大きなブレークスルーが起きたといえます。今までのカメラやセンサーは、人間とのコミュニケーションしかできませんでしたが、生成AIが間に挟まることによって、機械が人間と仕事ができるようになります。チームの一員として働けるようになるところが大きなブレークスルーです」(上田氏)

  • 基調講演でAI-driven IoTについて語るMODE CEO/Co-Founderである上田学氏

    基調講演でAI-driven IoTについて語るMODE CEO/Co-Founderである上田学氏

また同氏は、生成AIのスタートアップが無数に生まれているが、リアルな現場に使っていこうという企業は、グローバルで見てもまだまだ少なく、MODEは現場で生成AIとIoTを活用している数少ない企業であることをアピールした。

そして、「今まで培ったさまざまな現場にある機器、センサー、カメラ等からのデータを統合するBizStack、そしてそれを活用するための言語インタフェースとなるAIアシスタント(BizStack Assistant)。この2つで、われわれは日本が直面している働き手不足問題に対して立ち向かっていこうと考えています」と、上田氏は語った。

西松建設はAI×IoTで現場の作業員を削減

生成AI×IoTソリューションを実際のトンネル工事に導入し、日々の点検作業時間を削減しているのが、西松建設だ。

同社は、MODEのBizStackとBizStack Assistantを導入し、スマートフォンからチャットツールを用いて、設備の稼働状況を瞬時に確認できるようにした。これにより、日々の点検作業時間が40%削減され、異常発生時には現場のセンサーやカメラのデータ、復旧手順などのナレッジを呼び出すことで、迅速な情報収集と初期対応が可能になったという。

基調講演には、スペシャルゲストとして、西松建設 執行役員 DX戦略室長 坪井広美氏が登壇。同氏は、現場におけるITの活用は、生産性向上や効率化ということを目標にすることが多いが、同社が目指しているのは、ダイレクトに人を減らすことだと語った。

「造成現場は、職員4人程度必要ですが、当社は2人でやると決め、そのためには何が必要かを現場の職員と考えています。掘削機械のオペレーターさんの目と同じ映像、広いヤードの中で機械がどういうふうに配置され、どこを作業しているのかといった位置情報を用意し、作業員さんがハンズフリーで会話を行って遠隔施工管理を実現することで、たった2人で品質工程をすべて守って、残業もなくやってきました。建設現場は今後、人が減っていくので、鉄筋を組む人が10人必要だったところを8人でやるためにどうするのかを考えています」(坪井氏)

  • 西松建設 執行役員 DX戦略室長 坪井広美氏

    西松建設 執行役員 DX戦略室長 坪井広美氏

また同氏は、現場の作業員を減らしていくための技術について、「コミュニケーションは一般的に、人と人のつながりを指しますが、これからは物同士、物と人がつながるといった今までつながらなかったものがつながることがすべてだと思っています。いろいろな技術やテクノロジーがあるので、それらをどう結びつけるのか、何と何を結びつけられるのかに期待しています」と述べた。

映像と音声が追加されるBizStackインタフェース

続いて、MODE CTO/ Co-FounderのEthan Kann(イーサン・カン)氏が、BizStackのアーキテクチャについて説明した。

  • MODE CTO/ Co-FounderのEthan Kann(イーサン・カン)氏

    MODE CTO/ Co-FounderのEthan Kann(イーサン・カン)氏

BizStackは、分析、可視化、アラートのユーザーインタフェース、およびデータ蓄積のためのクラウド基盤で、センサーや機器との接続を行い、データ送信をサポートするゲートウェイを備えた統合IoTプラットフォーム。

ゲートウェイは、IoTシステムのデータを集めるところで、工事現場、工場、倉庫などに設置されるもの。ゲートウェイで集められたデータがクラウドに送られて格納される。データが格納されるデータベースには、いろんなタイプものがあるという。

  • BizStackのアーキテクチャ

    BizStackのアーキテクチャ

「MODEのBizStackが他社と異なる点はEntityシステムです。Entityシステムは現実のビジネスで行われているものをモデル化したもので、これを使うことによって、必要な情報がすべて整理されて、必要な情報にすぐにアクセスできるようになっています」(Ethan Kann氏)

Ethan Kann氏に続いて登場したのは、プロダクトマネージャーの渡邊飛雄馬氏だ。同氏は、現在開発中のBizStack Assistantの新機能について説明した。

BizStack Assistantは現在、文字でのやり取りが中心だが、今後は、映像や画像、音声によるインタフェースが搭載されるという。

「BizStack Assistant」はチャット型インタフェースで、クラウドに保存されているデータからユーザーが必要な情報だけを抽出してくれるツール。BizStack Assistantが登場するまでは、ダッシュボードでデータを確認していたが、BizStack Assistantでは自然言語で問いかけて対話することで、さまざまなIoTデータやドキュメント(ナレッジ)を取得できる。

現在開発中の映像インタフェースは、「BizStack Assistant Vison」といわれるもので、現場に設置したカメラ映像や画像をBizStack Assistant自体が解釈して、その意味を教えてくれたり、アラートを鳴らしてくれたりするという。

例えば、「建設現場でヘルメットをかぶっていない人がいたらアラートを出す」「センサーのLEDが光ったらアラートを出す」「計器の数字を読み取る」といったことができるという。

  • 建設現場でヘルメットをかぶっていない人がいたらアラートを出すデモ

    建設現場でヘルメットをかぶっていない人がいたらアラートを出すデモ

「現場に置いてあるカメラを通じて、AIがあなたの目となって判断してくれます」(渡邊氏)

  • MODE プロダクトマネージャーの渡邊飛雄馬氏

    MODE プロダクトマネージャーの渡邊飛雄馬氏