J.フロント リテイリング新社長・小野圭一の「『価値共創リテーラーグループ』への進化を!」

「特に若い社員たちから、うちの会社ってこんな思い切った意思決定ができるんだとか、会社が変わるのではないかという期待をひしひしと感じている。しかし、わたしがトロトロして、やはり、会社は変わらないんだなという失望感が芽生えないよう、身の引き締まる思い」

 今年3月、当時48歳で社長に就任。前社長の好本達也氏とは19歳違いで、かなりの若返りとなった。足元では、富裕層やインバウンド(訪日観光客)の売上が好調。百貨店の免税売上高は過去最高を更新する見通しだが、為替や地政学リスクに左右されやすいインバウンドに依存した経営は志向していない。

「インバウンド消費が好調なのは有り難いが、自社ではコントロールできない要素も多い。できるだけ自社でコントロールできるよう、海外のお客様を顧客会員化したり、海外のパートナー企業と相互送客できるような仕組みを進めていく」

 今後3年は名古屋・栄を重点地区とし、松坂屋名古屋店と名古屋パルコを改装。その他、26年には百貨店やパルコ、GINZA SIXなど、グループが持つ運営ノウハウや知見、ネットワークなどを活かして、新たな商業施設を開業する予定。

 狙いはグループシナジーの最大化。店づくりだけでなく、これまで業態ごとにバラバラだったクレジットカードの集約や会員アプリの連携を検討している。

 今は日本人を中心に外商も好調。消費のけん引役は、20~30代の〝(夫婦ともに高収入な)パワーカップル〟で、今後は高質で心が高揚するような消費や体験を求める〝高質・高揚消費層〟の拡大を図るという。

「最近は50代でも20代と同じような服を着たり、20代でも50代と同じ小物を身に付けたりして、従来のように、年齢や所得でターゲット化していては対応できない。高質・高揚消費を志向するお客様から選ばれ続けられるよう、各店が独自の個性を磨きあげることで、感動共創、地域共栄、環境共生の3つの共創価値を提供し続ける『価値共創リテーラーグループ』へ進化したい」

大和総研副理事長・熊谷亮丸の視点「岸田政権の成果と積み残された課題」