日本の国力をどう高めるか
「国家ビジョンをぜひとも示して欲しい」─。経済人の多くが今回の与党・自由民主党総裁選に向けて、こんな要望を挙げる。人口減、少子化・高齢化が続き、若者が将来に不安を持つ。その結果、結婚もせず、子供を産まなくなった現実が重くのしかかる今、政治はそうした課題解決の方向性を指し示す必要がある。
今回の自民党総裁選には11人の人たちが意欲を示している(8月19日現在)。中でも、最も早く立候補を表明したのが最年少の衆院当選4回の小林鷹之・前経済安全保障相(49)。小林氏は「政策、国家ビジョンを議論していく。それで国民や党員に判断していただく機会になればいい」という趣旨の言葉を述べている。
こうした世界の中の日本という観点から、日本の立ち位置をどうするかという骨太の議論の提言が若い人から出ていることに期待がかかる。続いて小泉進次郎・元環境相(43)やベテランの石破茂・元幹事長(67)も意欲。
〝失われた30年〟と言われるが、これは同時に〝失われた政治の30年〟を意味する。敗戦から23年経った1968年(昭和43年)に日本は当時の西ドイツ(現ドイツ)を抜いてGNP(国民総生産、現在はGDP=国内総生産が標準)で米国に次ぐ世界第2位の経済大国となった。
それがバブル経済崩壊の後、2010年には中国に抜かれ、そして2023年にはドイツに抜かれて世界4位という現状。そして1人当たりGDPでは先進国で最下位の37位にまで低落。こうした現状から、若者は日本の将来に不安感を抱く。
国の基本軸である憲法をどう位置づけるのか。戦後、日本を統治したGHQ(連合国軍総司令部)が制定した日本国憲法(1947年施行)のままでいいのか。自分の国は自らの手で守るという外交・安全保障の立場も含めて再検討を望む声も根強い。
何より最大課題の1つ、社会保障にどう取り組むか。このままでは2060年には1人の現役世代で1人の高齢者の面倒を見るという時代に突入。社会運営が立ち行かなくなる恐れが強い。
日本の国力をどう高めるか。ここは国、企業、そして個人が連携して、課題解決に当たっていかなければならない時。その意味で、受益と負担の関係も含めて国民の意識改革も求められる。
そして世界には戦争・紛争が相次ぎ、米国を始め、内向き思考が強まる。とにかく、この状況を生き抜くために「自分さえよければ」という自己中心主義が国、そして企業、個人までもが、その誘惑に駆られがち。自助・共助・公助という日本古来の生き方をどう取り戻すか。そして、国と国をつなぎ、人と人をつなぐ日本の役割と使命が求められている。