インテルは「技術とビジネスをつなぎ社会を前進させる」をテーマとする「Intel Connection 2024」を9月3日と4日に開催。2日目の基調講演では、「最新情報 : インテルが牽引する AI PC」と題して、AI PCの最新情報についての紹介を行った。
Lunar LakeことCore Ultra シリーズ2が正式発表
Intelが標榜する「AI Everywhere」は、エッジからデータセンター、そしてクラウドまで、あらゆるプラットフォームでAIを活用できる社会の実現を目指そうというもの。そのエッジの姿がAI PCということとなる。このAI PC向けに同社は2023年末、対応プロセッサとして「Core Ultra シリーズ」をローンチ。Meteor Lakeの開発コード名で知られるシリーズ1製品は、これまでに2000万個以上が出荷され、同時に幅広いエコシステムパートナーと協力する形で、新たなAI機能やソフトウェアを300以上共同開発してきたという。
そのAI PCに対応するプロセッサの最新世代となるのが「Lunar Lake」(開発コード名)であり、今回、3日(ドイツ時間)に独ベルリンで開催されている国際コンシューマ・エレクトロニクス展(IFA 2024)にて「Intel Core Ultraプロセッサ シリーズ2」(Core Ultra シリーズ2)として正式に発表されたことを受けて、同製品の概要と搭載したAI PCの日本での一般に向けたお披露目が行われた形となる。
インテル代表取締役社長の大野誠氏は、「Core Ultra シリーズ2を搭載したAI PC、ぜひ手に取ってもらって期待してもらいたい」と、そのPCとしての高い性能に自信を見せた。
また、先行して発表されたIFAの会場から、フリーライターの笠原一輝氏が現地からの様子を中継する一幕もあり、Intelとして「A Great AI PC」というキーワードを強く来場者にアピールしていたことを伝えていた。このキーワードには、素晴らしいPCがあるから、素晴らしいAI PCが作れるという意味が込められており、高い性能で使い勝手の高いPCができたからこそ、AI PCとしても進化することができたことを強調していたとする。
消費電力の削減にこだわって開発されたCore Ultraシリーズ2
最新世代となるCore Ultra シリーズ2は「Core Ultraプロセッサー200Vシリーズ」という名称として、Core Ultra 5に4製品、Core Ultra 7に4製品、Core Ultra 9に1製品が現時点では分けられることとなる。
その最大の特徴は、同社のCPUアーキテクトたちが消費電力を下げるという熱意のもと実現した画期的ともいえる電力効率で、Core Ultraシリーズ1と比べてパッケージ全体の消費電力を最大50%低減しつつ、ワットあたりの性能を最大2倍向上させたほか、GPU単体の電力効率も2倍向上させたとし、Qualcomm Snapdragon X Elite(X1E-80-100)と比べても最大20%のワットあたりのパフォーマンスを発揮できるとする。
また、電力効率としても、CPUでシリーズ1比で最大2.29倍、GPUで最大2倍、スレッドあたりのパフォーマンスは最大3倍に向上。Core Ultraシリーズ2は最大8コア8スレッドで、シリーズ1は12コア14スレッド(Meteor Lake-UがPコア×2、Eコア×8、LP Eコア×2で構成)であったことを踏まえると、スレッド数を減らしながら効率を向上させたと言え、PCとしての全体的な性能の底上げが図られていることがうかがえる。
インテル技術本部 部長の安生健一朗氏は、「CPUの効率を上げることが生産性向上の核となる。それを意識してPコアとEコアという構成は継続しつつ、Pコアは性能向上以上に電力効率の向上を推進したほか、EコアはLP Eコアを含めた形で幅広い電力に対応するべくダイナミックレンジを拡大したアーキテクチャとして設計した結果、IPC(サイクルあたりの命令実行数)はEコアで68%向上、Pコアでも14%向上されており、コア数、スレッド数を削減しつつ、高い性能を提供できるようになった」と、CPUの性能向上を強調。併せてGPUについても、第2世代Xe(Xe2)アーキテクチャに刷新することで、グラフィックス性能を前世代比1.5倍向上させたほか、行列計算の高速化を可能とするマトリクスエンジンであるXMXエンジンを搭載することで、AIとしての処理能力67TOPSを実現するなど、高い性能を実現したとする。
GPUの67TOPSに加え、NPUの48TOPS、そしてCPUの5TOPSを加え、プロセッサ全体として120TOPSのAI処理性能を提供するCore Ultraシリーズ2。Intel OpenVINOツールキットの活用により、開発者はCPU、GPU、NPUに自由にAI処理を振り分けることが可能となり、例えば同じStable Diffusion 1.5(GIMP)をGPUで処理した場合、20回のiterationで3.89秒、NPUでは5.28秒と程度に差はあれど、用途に応じた使い分けができることが示された。
Core Ultra シリーズ2登載AI PCは9月24日に発売
インテル執行役員 マーケティング本部 本部長の上野晶子氏は、「AI PCは事実上、2023年に最初のシリーズ1を発表した時からスタートした」と、これまでの9か月間を振り返り、さまざまなパートナーと協力してきた取り組みに触れ、「AI PCとして今できることを示すのではなく、AI PCの持つ可能性と未来を語ることを目指してきた」ことを強調。AI PCは同社が2003年に打ち出した「Centrino」以来の大きなモメンタムであるとした。Centrinoでは、Wi-FiをCPU/チップセットに加えることで、PCを家の外に手軽に持ち出すことを可能としたが、AI PCもPCにAIを加えることで、新たな未来を語れるようにできる可能性があるとした。
上野氏は「重要なのはエンドユーザーがAI PCをどう使ってもらえるか。未来は皆で作るもので、重要なのはハード、ソフト、ユーザーが一体化して進むこと。皆でAI PCの未来を創っていきましょう」と聴講者にも呼びかけを行ったほか、パートナーであるPCメーカー各社との協力関係を強固にしていく姿勢を見せた。
Core Ultraシリーズ2を登載するAI PCは米国時間9月24日6時より正式リリースされる。日本時間に換算すると22時となるので、実際に多くの人が入手可能となるのは流通を考えれば、25日以降ということとなる。すでに国内での提供を表明しているメーカーは9社、うち7社のPCの実機が披露された。
なお、Microsoftの認定などの関係から、9月24日時点ではCopilot+ PCレディの状態での出荷となるが、11月には認証などが取得でき、Copilot+ PCとしての販売となる。Copilot+ PCレディとして先行して購入した場合であっても、対応機能などは無償アップデートで入手できるため、どのタイミングで購入してもCopilot+ PCとしての扱いに変わりはないという。また、vProプラットフォーム対応のビジネス向けデバイスは2025年初頭より発売される予定だとしている。