日本IBMは9月2日、地域金融機関の課題解決による価値向上と地域創生の実現に向けた、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進に関する共創検討について、日立製作所とアマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWS)と共に覚書を締結したと発表した。

共創検討の概要

今回の共創検討は3社が連携し、デジタルシフトによる経営資源の最適化やデータ利活用による新たなサービスの提供など、地域金融機関における課題を解決することにより、地域社会の活性化や発展を実現させる新たな価値創出を目指す。

近年、市場の急激な変化や多様化する顧客ニーズへの柔軟な対応、脱炭素など環境への取り組みなど、さまざまな需要が増加する中で、地域金融機関においてもテクノロジーや顧客ニーズの変化に対応するため、データ利活用やデジタルシフトなどの迅速なDX推進が求められているという。

一方で、ITシステムを提供する複数の企業による個別最適化されたシステムから、シームレスに連携した全体最適化されたシステム構成に変更することは容易ではなく、地域金融機関では利用者のニーズに応じた迅速なサービス拡大が課題になっていた。

また、地域金融機関では「顧客体験の向上」「データ利活用」「AI技術活用」といったDXの活用を推進し、地域社会への持続可能な発展に貢献することが求められている。そのため、システムを提供する企業間の連携による地域金融機関の全体最適化を実現するシステム構築が急務となっているとのこと。

今回の共創検討では、ITシステム・サービスにおける日本IBMの先端技術や金融ビジネスにおけるノウハウや知見、日立が有する金融業界のみならず社会インフラの構築で実績を持つシステム構築力、さらにクラウドサービスをグローバルで提供するAWSがそれぞれの強みを生かし、相互連携を行う。

これら3社の連携を通じて、デジタルシフトによる経営資源の最適化やデータ利活用を推進する新たなサービスの提供に取り組み、地域金融機関に対して多様な価値提供と地域社会の課題解決に向けた検討を推進していく。

日本IBMは、2020年にオープン・ソーシング戦略フレームワークを発表以降、「金融サービス向けデジタルサービス・プラットフォーム(DSP)」を中心に、地域金融機関の顧客の支援を推進している。

DSPは「モバイル・バンキング・アプリの接続基盤」や「生成AI活用基盤」、「マルチチャネルやマルチクラウドを実現する基盤」といった金融ビジネスのDXを加速化するプラットフォームとして、30社を超える金融機関で活用されている。

  • 「オープン・ソーシング戦略フレームワーク」と「DSP」

    「オープン・ソーシング戦略フレームワーク」と「DSP」の概要

今回の取り組みを通じて、IBMのDSPを中心としたエコシステムに、日立が提供する融資業務などの各種DXソリューションが加わり、AWSを活用して相互に接続させることで、地域金融機関の勘定系システムや周辺システムにおける連携の簡素化や効率化を図ることができるという。

たとえば、融資の申込受付時には、これまでは申込者のさまざまな情報の収集に複数のシステムを横断する必要があり、人的リソースや時間の確保も要していたが、システム連携によりオンラインで確認できるようになることで、業務生産性の改善を見込むことを可能としている。

日本IBMは今後、各社の持つ強みを活かして相互に連携することで、個別業務だけでなく生成AIやデータの活用といった全社横断的な業務へも拡大していく。また、ユースケースの多様化を目指すとともに、オープンで柔軟なソリューションの提供、およびベンダーの垣根を超えた取り組みを推進することで、地域金融機関のDX化を支援していく考えだ。