農林水産省は8月2日、2024年上半期(1~6月)の農林水産物・食品の輸出額の結果を公表した。前年同期比1.8%減の7013億円で、上半期の輸出額が前年を下回るのは、コロナ禍の20年以来で、昨年まで11年連続で前年を上回ってきたが、この連続増加の記録が途切れる可能性も出てきた。
今年上半期がふるわなかったのは、昨夏の東京電力福島第1原発のALPS処理水放出が原因だ。これに反発した中国が日本の水産物を対象に全面的に禁輸措置にした。このため、中国向けは43.8%減の784億円と大幅に減少した。
禁輸措置が発動されるまで、北海道を中心したホタテは日本の海産物の輸出の主力商品となっており、約50万トンの生産量のうち約10万トンを中国に輸出していたが、これがゼロになった。香港も東日本の10都県の水産物を禁輸にしたため、10.5%減の1032億円だった。
半面、日本政府や企業の努力や円安の影響で、中国と香港以外への輸出は前年比14.3%増となった。特に米国向けは19.9%増の1156億円で、昨年の中国を抜いてトップになった。ホタテ貝や日本酒などが伸びた。ベトナム向けも22%増の401億円でホタテや粉乳が伸びた。台湾向けも9.2%増の736億円で、牛肉やリンゴが伸びた。
政府は25年に2兆円、30年に5兆円を目標に掲げている。坂本哲志・農林水産大臣は2日の会見で、「現行の目標達成に向けて、できる限りの施策の推進を努めていくので、目標の変更はない」と主張した。
また、政府は処理水の放出を受け、水産業を守る政策パッケージを展開。ホタテを中心に輸出先の転換・多角化を進めていることにもふれ、「中国・香港以外の輸出は拡大しているものの、中国等の減少分を補うには至っていない。引き続き、中国等に対し、科学的根拠に基づかない規制の即時撤廃を強く働きかけていく」と述べた。