経済産業省は、エネルギー政策の中長期的な指針となる「エネルギー基本計画」の見直しに向け、有識者の作業部会を設けて電源ごとの発電コストの検証を始めた。同計画には、火力発電や太陽光・風力、原発といった様々な電源の最適な構成を示す「エネルギーミックス」が盛り込まれる。コストの検証結果は電源構成の議論に大きな影響を与えそうだ。
経産省は2021年に現行のエネルギー基本計画を策定した際にも、30年時点のコスト検証を実施。当時の試算では、事業用太陽光が1キロ㍗時当たり8.2~11.8円と、主要な電源の中で最も経済性が高いとされた。原発は、核燃料サイクルや事故対応費用なども含めて11.7円以上となった。
中東情勢の緊迫で安定的な化石燃料調達の不確実性が高まるなど、当時と比べてエネルギー政策を取り巻く環境が激変しているため、経産省は最新の情勢を織り込んだ試算をまとめることにした。
今後の議論については、自然条件に応じて出力が変動する再生可能エネルギーの普及を踏まえ、送配電網を安定化させる費用の取り扱いを議論していくことを確認した。こうした費用は「統合コスト」と呼ばれ、重要性が高まっている。
電力は常に需給を一致させなければ周波数が乱れ、大規模な停電を招く。電力会社は、再生エネルギーの発電量が多い時間帯は火力発電の出力を抑制するなどして対応。ただ、これに伴い火力の発電効率が悪化するため、需給調整に要したコストを各電源にどのように配分するかが検討課題になる。政府は再生エネルギーを主力電源とする方針だが、統合コストの配分が大きく増えた場合は経済性が低下する可能性もある。