先日、生成AI向けクラウドサービス「高火力」のコンテナシリーズ「高火力 DOK(ドック)」でβ版の「NVIDIA H100 プラン」を発表した、さくらインターネット。本稿では、代表取締役社長である田中邦裕氏が語った国内IT業界の現況、そして同社における今後の事業展開について紹介する。

  • さくらインターネット 代表取締役社長である田中邦裕氏

    さくらインターネット 代表取締役社長である田中邦裕氏

はじめに、さくらインターネット 代表取締役社長の田中邦裕氏が事業説明を行った。同社では、日本を代表するデジタルインフラ企業を目指し「デジタルインフラ」「GX(グリーントランスフォーメーション)」「人材」の3つを注力分野としている。

日本独自のデジタルインフラを

まずはデジタルインフラからだ。同社は1996年にレンタルサーバ事業で創業して以来、サーバビジネスへの転向やクラウドサービスへの集中により、着実に業績を伸ばしてきたが、2022年3月期に成長が鈍化。しかし、その後は持ち直し、今期(2025年3月期)はガバメントクラウドやGPUクラウドの伸長により、売上高は前年度比28.3%増の280億円と過去最高を計画している。

  • 事業領域の変遷

    事業領域の変遷

田中氏は「AWS(Amazon Web Service)やMicrosoft Azure、Google Cloudなど外資系クラウドベンダーとの闘いが特に直近5年間で熾烈になってきているということが売り上げにも現れている。当社は、ここ数年間クラウドで大きく伸びてきたが、外資系クラウドベンダーの影響でデータセンターのコロケーションに関しては縮小を余儀なくされた」と述べた。

同氏が指摘するように外資系クラウドベンダーの影響でデジタルサービスの海外支払いが増え、「デジタル赤字」が拡大していると指摘。2023年の赤字額は5兆5000億円で、10年前の2倍以上に達しており、日本発のクラウドサービスやソフトウェアが少ないため、外資系サービスの輸入が増えているという。

そして「特に2023年は円安が進んだこともあり、外資系のソフトウェアやサービスに依存することが、いかにコスト高を招くのかということを認識したのではないだろうか。当社の立場としても、外資系ベンダーが提供する便利なサービスが日本で使われるべきだと思う。ただ、一方で中国などを見てみれば海外のサービスが使えなくなると自国のIT産業が伸長するという側面があり、バランスが必要。便利なサービスを使いつつ、自国のサービスも伸長させていくことが日本型だと考えている」と、同氏は説明した。

  • クラウド化の進展によりデジタル赤字が膨らんでいる

    クラウド化の進展によりデジタル赤字が膨らんでいる

主役はソフトウェア - 垂直統合型、自前主義のさくらインターネット

では、なぜ日本のIT業界、特にインフラ分野における成長が芳しくないのか。この点について田中氏は、国内のIT企業がデジタルインフラにフォーカスしていないからだという。

同氏は「本来であれば国内大手のIT企業がインフラを手がければ、彼らは大量のサーバを持っているため外販することでクラウドサービスが広がるはずだった。しかし、残念ながらITインフラに向かう企業が少ない」と指摘。

同氏によると、ソフトウェアをサービスとして提供している国内のIT企業はインフラ分野まで進出しておらず、その反面で米国はソフトウェアをサービス提供している企業がインフラの分野まで事業領域を拡大しており、インフラ自体を提供している点を挙げている。また、国内のIT企業がインフラ分野に進出しない理由の1つは、ソフトウェアの重要性を十分に認識していない、ということもあるだろう。

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