「現時点でパラマウントの買収は戦略としてフィットしない」
こう語るのは、ソニーグループ(G)社長の十時裕樹氏。
ソニーGが、米メディア大手パラマウント・グローバルの買収交渉から撤退した。買収金額などの条件面で折り合いがつかなかったとみられる。
パラマウントは、7月に米映画制作会社スカイダンス・メディアによる買収提案に合意。スカイダンスは米投資会社と連携し、買収に80億ドル(約1.3兆円)を投じて競争力強化を目指す。スカイダンスはパラマウントの議決権の8割を握る非上場企業ナショナル・アミューズメント(NAI)を24億ドルで買収し、スカイダンスとパラマウントを統合させる方針。
パラマウントはトム・クルーズ主演の人気映画『ミッション:インポッシブル』を手掛けるなど、米3大ネットワークの一角CBSを所有する老舗企業。
だが、23年通期決算は純損益が6億ドルの赤字に転落し、24年4―6月期も54億ドルの最終赤字。ソニーGは映画などのコンテンツ事業の買収を検討していたが、動画配信サービス・ネットフリックスなどの勢力が台頭する中、パラマウントは経営不振に見舞われて会社ごと身売りを決断した形。
このため、十時氏も「パラマウント買収はリスクの観点からも、経営資源の配分という観点からもフィットがあまり良くない」と考えたようだ。
ソニーGは映画や音楽といったコンテンツIP(知的財産)の獲得や、IPの制作を担うクリエイターの支援強化を打ち出している。27年3月期までに、IPの買収などに1兆8千億円を投じる計画だが、今回、パラマウント買収から撤退したことで、M&A(合併・買収)を含めた新たな戦略を構築しなければならない。
動画配信を巡っては、ネットフリックスの他、ウォルト・ディズニーやアップル、アマゾンも動画配信サービスを強化しており、各社とも独自コンテンツの配信によって、顧客の取り込み拡大を急ぐ。
競争の激しいコンテンツ業界で、どう存在感を高めていくか。今後もコンテンツ産業をめぐる再編が続きそうだ。