onsemiは8月27日、同社の主力事業領域の1つであるセンサ製品・技術に関するプライベートイベント「Japan Annual Sensing Summit(JASS) 2024」を開催。最新のイメージセンサをはじめとするさまざまな製品を、車載用および産業用に分類しデモンストレーションと共に紹介した。

  • onsemiは「JASS 2024」を開催した

    onsemiはセンサ製品のデモンストレーションを多数披露する「JASS 2024」を開催した

センサ事業を強化するonsemiが日本向けイベントを実施

米・アリゾナ州スコッツデールに本社を置く半導体メーカーのonsemiは、パワー半導体とイメージセンサを主力製品としている。今回開催されたJASSは、onsemiが有するイメージセンサを中心としたセンシング領域の技術について、デモンストレーションを交えながら最新製品を含め紹介するプライベートイベントだ。

前回の開催は2023年10月。以来、同社の主力製品である「Hyperlux」シリーズでは多くの製品が発表され、車載向けに限らずさまざまなアプリケーションへと用途を広げている。また2024年7月には、CQD(コロイド量子ドット)ベースの短波赤外(SWIR)技術を有するSWIR Vision Systemsの買収を完了。先進的な要素技術を獲得しながら、新製品の開発体制強化を続けているとする。

イベントの開催にあたり、onsemi日本法人の林孝浩代表取締役社長は、「機器あたりのイメージセンサの搭載個数が年々増加する中で、顧客が直面する技術課題も当然ながら増えている。そういった課題を解決する新たなセンシング技術を開発できるよう、日々邁進していく」と語った。

  • onsemiの林孝浩代表取締役社長

    onsemi日本法人の林孝浩代表取締役社長

ADAS実現に不可欠なイメージセンサを数多く展示

会場内のデモンストレーションエリアでは、アプリケーションが車載用途と産業用途に分類され、さまざまな製品・技術が紹介された。

車載用途向けには、自動運転や先進運転支援システム(ADAS)の実現に不可欠な車外環境の監視への活用が期待されるセンサ製品を展示。Hyperlux AR0823と競合製品をそれぞれ用いたデモンストレーションでは、ハイダイナミックレンジ(HDR)性能を強みとするonsemi製品が、照明のフリッカーを抑えたり路面状況を正確に反映したりするなど、より鮮明な撮像が可能であると説明する。

  • キャプション

    onsemi製品のHyperlux AR0823(右)と競合他社製品(左)の撮像能力比較デモ

また運転者の居眠りなどを監視するドライバーモニタリングシステムシステムを想定した、スマートiToFセンサのデモンストレーションも行われた。ToFとは“Time of Flight”の略で、測距に適した技術を指す。今回展示されたスマートiToFは、センサからの距離を測定するのはもちろん、対象者の目線なども感知。眼鏡をかけている場合の検知に加え、目の開閉や会話の有無などもセンシング可能だとした。

「バイワイヤ」を推進する位置センサも紹介

前出のスマートiToFセンサは産業用途向けでも活用されており、今回は大小2つのデモンストレーションが用意された。そのうち片方は測距の精密さを表すもので、1~2mm程度の段差がついた模型に対し、そのわずかな差を可視化することに成功。担当者によると、このセンサでは距離に対しておよそ0.5%の精度で検知が可能だという。

  • スマートiToFセンサでの測距対象とされた段差

    スマートiToFセンサでの測距対象とされた段差。白や黒の対象はイメージセンサでの正確な測定が難しいとされる

  • スマートiToFセンサでの測定結果

    スマートiToFセンサでの測定結果。細かな段差も明確に検出されている

一方で大規模環境として、部屋全体のセンシングも実施。同じく距離に対して0.5%の精度で測定が可能であり、部屋全体の人流などを把握することで空調の効率化などに活用することができるとする。

  • 部屋全体の測距画像

    部屋全体の測距画像

また、導入が広がりつつある誘導型位置センサのデモンストレーションも披露された。従来では機械的な機構によって制御などを行っていた産業機器であるが、接触などを伴う機構では消耗が生じ、時間が経過するにつれて故障のリスクが高まる。そのため近年では、機器の制御を電気信号に置き換えるシステムへの移行が広がっており、産業機器に加え、車載用途においても「バイワイヤ技術」としてトレンドとなっている。

今回展示されたのは、自動車のアクセルペダルのセンシング。位置センサは2つのみ搭載されており、それらの検出結果からペダル操作の強弱を正確に検出するという。なおonsemi製品の強みとして、センシングにおける傾きの初期値などをチップ側で処理・設定することが可能な点があるとのこと。カスタマイズ性が高く、顧客の求めるシステムに合わせた仕様で組み込むことができるとした。

  • アクセルペダルのデモ

    誘導型位置センサを活用したアクセルペダルのデモ

車載・産業の両分野でセンサ開発を継続

事業の柱の1つとして幅広いセンサ製品を取り揃えるonsemi。今後も新たな技術の獲得や製品ラインナップの拡大に取り組むとのことで、特に車載センサの領域については、2024年2月よりGeoff Ballew氏が新たなゼネラルマネージャとして統括するなど、活発な動きを見せている。また産業領域については、同社のバイスプレジデントも務めるJohn Gerard氏が続けて指揮を執る。今回のイベントでは両ゼネラルマネージャも登壇し、それぞれ今後も開発を強化していく姿勢を示した。

  • onsemiの林孝浩社長、Geoff Ballew氏、John Gerard氏

    onsemiの林孝浩社長、車載センサ事業を統括するGeoff Ballew氏、産業用センサ事業を統括するJohn Gerard氏(左から順)

なお林社長によると、車載と産業向けという2つの領域で展開するセンサの開発においては、「産業向けに開発した技術を転用して車載向け製品の開発につなげる場合もあれば、その逆の流れによる開発もある」といい、各領域で生まれた基盤技術を活用し、別のユースケースに最適化した製品の開発も積極的に進めるとのこと。「進化の早い車載領域と裾野の広い産業領域を両軸として推し進めていきたい」と語った。

2024年9月4日訂正:記事初出時、本文内にてonsemiの所在地について「米・アリゾナ州フェニックスに本社を置く」と記載しておりましたが、同社は2023年3月に本社をフェニックスからスコッツデールへ移転済みであるため、当該部分を修正させていただきました。ご迷惑をお掛けした読者の皆様、ならびに関係各位に深くお詫び申し上げます。