2025年日本国際博覧会協会(博覧会協会)は8月28日、東京都内で記者会見を開き、未来社会ショーケース事業「未来の都市」のパビリオンで展示する内容を発表した。日立製作所(日立)やKDDIといった協賛企業が主体の「個者展示」、博覧会協会が主体の「共通展示」の詳細が明らかとなった。
全長約150mの大規模パビリオン「未来の都市」
「未来の都市」は、博覧会協会と12者の企業・団体による共同出展事業。「Society 5.0が目指す未来の都市」をテーマに、組織や企業、業界の垣根を超えたコンテンツが展示される予定。会場西側のウォーターフロントに位置し、敷地面積約4800㎡(長さ約150m、幅約33m)、展示面積約3300㎡と、2025年4月13日から開催される大阪・関西万博の中でも大規模なパビリオンとなる。
同パビリオンは昼と夜で外観の雰囲気が変わるようなデザインで設計されており、照明やミストによって幻想的な雰囲気が醸し出せるという。
「未来の都市」の展示は、博覧会協会が主体の「共通展示」と12者の協賛者が主体の「個者展示」の2種類で構成される。
共通展示では、高さ5m、長さ92mにも及ぶ3層紗膜スクリーン2面による映像で「社会の変化」などを表現する。また、特殊なロボットの頭部に搭乗して未来の都市を散策できるコンテンツなども用意。4つのロボットヘッドで多様なクリエイターが演出する未来の産業や社会を仮想体験できる。
日立とKDDIが共同展示「Society 5.0と未来の都市」
今回、新たに個者展示の詳細が明らかとなった。最も規模が大きいのは、日立とKDDIによる共同展示「Society 5.0と未来の都市」。「未来は自分たちで変えられる」がコンセプトの同展示では、未来の課題に対する解決策を来場者が自分で選択することを通して、未来の都市がどのように変わるのかをシミュレーションにより体験できる。
記者発表会に登壇した日立 研究開発グループ デザインセンター 主管デザイン長の丸山幸伸氏は「今までの街づくりは一方通行で進められた。未来の都市はみんなで考えて作っていくもの。サイバーフィジカルシステムという最新技術を活用し、みんなで社会の変化を生み出していくような体験を提供したい」と述べた。
展示は、「シアターゾーン」と「アクションゾーン」で構成される。
シアターゾーンは、来場者120人が一度に入場できるシアター形式の施設で、スマートデバイスを活用する体験型のコンテンツを展示する。設定は、来場者が「10年後の未来をのぞき、課題解決に参加できるサイバー空間」というもの。
2035年の未来に住む子どもから、身近なテーマについてのSOSを受け取り、来場者はナビゲーターとともに未来の課題や選択肢について理解を深める。解決策を自ら選択することで、未来の都市がどのように変わるかを体験する。また両社は、シアターゾーンと同様の体験ができる環境をメタバース上に構築する予定で、大阪・関西万博会場外からも体験できるようにするとのことだ。
アクションゾーンは、子ども向けの展示。体を動かしながら参加できるゲームコンテンツを用意し、「一人ひとりの行動が都市の課題を解決に導き、未来の都市を変えられることを体験できる」(丸山氏)という。ゲームコンテンツの詳細は今後発表される。
またKDDIは、大阪・関西万博会期中にバーチャルプラットフォーム中に「バーチャル未来の都市」を構築し、パビリオンとは異なる体験を提供する予定。KDDIだけでなく、他の協賛者と共に構築する。来場者はアバターとして街を散策し、未来のテクノロジーに触れたり、街の住人と会話したりすることができる。同技術の詳細も今後発表される。
「博覧会史上でも稀な奥行きのある体験を」
「未来の都市」パビリオンでは、他にも「交通・モビリティ」(川崎重工、商船三井、関西電力送配電)と、「環境・エネルギー」(日本特殊陶業、日立造船、IHI)、「ものづくり・まちづくり」(神戸製鋼所、青木あすなろ建設、小松製作所、CPコンクリートコンソーシアム)、「食と農」(クボタ)の4分野の展示エリアがある。
商船三井の展示では、動く洋上風力発電と水素生産設備が融合したハイブリッドプラント船「ウインドハンター」を中心に表現し、IHIの展示では、来場者が「不思議な空飛ぶキューブ」に乗り、海の中から宇宙、ミクロの世界を探検してクリーンエネルギーの循環について学ぶ。
記者会見に登壇した博覧会協会 企画局 局長の河本健一氏は「未来の都市は次世代技術や社会システムが反映された未来の暮らしや生活を体現する場だ。協賛12者との共創で、博覧会史上でも稀な奥行きのある体験を提供する」と意気込みを見せた。