日立製作所傘下の日立エナジーは8月28日、電力系統安定化関連のサービスを「Grid-enSure」ポートフォリオとして統合すると発表した。同ポートフォリオには、電力系統の開発と高度化のためのコンサルティングサービスや、パワーエレクトロニクス・制御システムに関する垂直統合のソリューションなどが含まれる。
具体的には、HVDC(高圧直流送電)や、静止型無効電力補償装置、静止型周波数変換器、中電圧直流送電、エネルギー貯蔵ソリューション、パワー半導体技術などを統合する。電力システムの計画・設計・運用を包括的に支援する考えだ。
電力システムの運用環境は、再生可能エネルギーの導入拡大、分散電源化、産業分野の電化・脱炭素化により複雑化している。また、世界では3000GWの再生可能エネルギープロジェクトが今後電力系統に連系される予定で、これは2022年に新たに電力系統に連系された太陽光発電と風力発電の容量の5倍に相当する。
IEA(国際エネルギー機関)は、2040年までに8000万kmの電力系統を新設もしくは更新する必要があり、2030年までに電力系統への投資を年間6000億ドルに倍増させる必要があると試算している。
日立エナジーが同ポートフォリオのソリューションの一つとして提供する次世代型STATCOMは、高出力半導体によって制御されるスーパーキャパシタの形でエネルギーを蓄えてエネルギー利用率を倍増させることで、従来のソリューションと比較して設置容量を20%以上削減することが可能だという。
次世代型STATCOMは、30年の製品ライフサイクルの中で、従来のソリューションと比較して最大40%のCO2排出量を削減できる可能性があるとのこと。また、日立エナジーの自励式HVDC技術である「HVDC Light」は、従来のHVDC技術と比較して65%以上の温室効果ガス排出量を削減する。
日立エナジーはドイツの国営送電事業者トランスネットBWへ系統安定化装置を提供しているが、グリッドフォーミング制御とよばれる技術によって電力品質を向上させており、従来のソリューションと比較して最大40%のCO2排出量を削減している。これにより1100万人の人々と多くの産業への電力供給につなげているという。
日立エナジーのグリッドインテグレーションビジネスユニット担当役員のニクラス・パーソン氏は「前例のないレベルで再生可能エネルギーの導入が進んでおり、エネルギー転換の加速を支援するために、電力システムの計画、設計、運用方法を再考する必要がある」とコメントしている。