米国半導体工業会(SIA)とボストン コンサルティング グループ(BCG)は、各国政府の政策立案者向けに半導体企業が投資を決定する際に影響を与える5つの要因に関するレポート「Attracting Chips Investment: Industry Recommendations for Policymakers」を発表。米国をはじめとする各国政府に対して、さらなる半導体への直接投資を促した。
5つの要因については以下の通り。
投資および運用コスト
新たな半導体の開発には、設計と製造の両方にコストがかかる。中でも工場建設の選定では、土地、ユーティリティ、設備、材料、労働力、税金など、立地固有のコストを徹底的に分析する必要があることから、建設や設備コストを相殺する政府支援は魅力的なものとなる。
労働力
半導体業界の多くの企業が教育システムと官民パートナーシップの融合による技術者や熟練した職人から博士レベルのエンジニアや科学者まで、豊富な才能のパイプラインを生み出せる仕組みを国を求めている。そうしたタレント育成を推進する政府は、半導体業界のみならず、その他の戦略的テクノロジー部門からの投資を引き付けるのに有利な立場となる。
インフラストラクチャ
安全で信頼性が高く、コスト効率の高い水道、公共設備、通信、輸送インフラストラクチャは半導体産業にとって重要で、政府はそれらの安定性を日常的に維持しつつ、将来ニーズを十分にサポートできるインフラ整備に投資する必要がある。
規制および貿易環境
半導体サプライチェーンは、市場を意識した貿易政策と、知的財産権および貿易コンプライアンスを尊重する規制枠組みを持つ国に集中している。半導体への投資促進には、貿易および許可コストを最小限に抑え、管理プロセスを合理化し、半導体製品およびデータの移動を促進する政策の推進が必要である。
統合されたエコシステム
半導体産業はサプライヤのみならず、顧客、研究開発パートナー、教育パートナー、革新的な才能が集まる活気あるエコシステムで成長する。
SIAでは、自国を半導体企業の投資先としてアピールしたい政府は、他国の政府も同様の動きをしていることを踏まえる必要があるとしており、こうした提言を推進することが、半導体エコシステムへの投資を呼び込み、世界的な半導体サプライチェーンのセキュリティ、回復力、多様化の推進を可能にすると指摘している。
SIAのCEOが米国半導体製造復活に向けた戦略的行動を提言
また、SIAのプレジデント兼CEOであるジョン・ニューファー氏は同レポートを踏まえ、米国政府と米国半導体業界は引き続き協力し、米国における強力かつ永続的な半導体エコシステムの確保に向けた「米国へのさらなる投資の奨励」、「労働力の強化」、「研究とイノベーションの推進」、「オープンな市場の促進」という4つの分野を戦略的を推進していく必要があるとコメントを出している。
そのためには、米国への企業投資を促進する呼び水として証明されたCHIPS法を延長・拡大すべきと同氏は指摘。米国議会は、既存の税額控除の期間を延長し、半導体設計など、製造以外の領域にも対象を拡大すべきとしているほか、CHIPS法の継続と併せて、STEM人材の育成強化、研究分野に向けた資金援助の拡大、新市場開拓を含めた国際的なパートナーシップに基づく、世界の市場へのアクセス拡大が重要であるとしている。