市場調査会社である仏Yole Intelligenceが発行した「MEMS 2024」によると、2023年のMEMS市場は前年比3%減の146億ドルとなったという。
主にスマートフォン(スマホ)をはじめとする民生市場の低迷によるものだが、2024年は市場が回復に向かい、売上高で同7%増の156億ドル、数量ベースでも同9%増の約340億個を見込むとする。また、長期的には民生機器や自動車へのセンサ搭載数の増加に加え、AIなどのメガトレンドにけん引され、市場拡大を期待するとしており、2023年~2029年の年平均成長率(CAGR)は5%で、2029年には数量は約430億個、売上高も200億ドルとなると予測している。
最終用途としてもっとも市場が大きいのは民生電子機器で、2023年の77億ドルが2029年には98億ドルになると予測している。
MEMSサプライヤ売上高トップ30に日本企業が4社ランクイン
2023年のMEMS売上高をサプライヤ別に見ると、トップはRobert Bosch、2位はBroadcom、そして3位にTDKが入ってきた。また、Skyworks、Honeywell、キヤノンの3社が新たにトップ10入りし、代わりに中Goermicro、NXP Semiconductors、Qualcommの3社がトップ10圏外となった。
トップ30に入る日本企業は3位のTDK、10位のキヤノンのほか、16位に村田製作所、18位にセイコーエプソンがそれぞれランクイン。また、Skyworksは日本企業ではないが、パナソニックの事業を継承する形で大阪にBAWフィルターの前工程工場を有している。キヤノンとエプソンのMEMS製品の主力はインクジェットプリンタヘッドで、村田製作所は車載慣性センサ、2022年の7位から3位へと躍進したTDKは、センシングソリューションプロバイダのInvenSenseを2017年に買収した効果が本格的に出てきたようだ。
MEMS生産の主流は欧米
Yoleでは、2023年にMEMS向けウェハは約400万枚処理されたと推定しており、2029年にはこれが500万枚に増加すると予測している。
地域・国別に見ると、約60%が欧米諸国、約19%が日本、残りが中国と東南アジア(マレーシアとシンガポール)で生産されている。Yoleでは各国が国内回帰の動きを見せているが、今後数年間は中国の製造シェアが増加すると予想している。中国ではMEMS企業とファウンドリが急増、現地では供給過剰が発生し、ほとんどの企業が利益率を低下させており、今後の需要が増加しない場合、それら中国系MEMS企業の倒産などの可能性もでてくるという。また、中国のエコシステム内での統合が進む可能性もあり、生き残りに向けた資金援助を受けられる企業がどこになるのか注目されるとしている。
なお、2023年のMEMSファウンドリ市場は同1%減となっており、ほとんどのメーカーが製造受託を減らしたとYoleでは見ているが、こうした減少は新しい設計と技術でMEMS業界に参入するプレーヤーの継続的な成長によって世界的に相殺されているとYoleは指摘している。