三菱電機は、次世代の光ファイバー通信速度である800Gbpsや1.6Tbpsに対応可能な、データセンター向け光トランシーバー向け受信用光デバイス800Gbps/1.6Tbps光ファイバー通信用200Gbps pin-PDチップ「PD7CP47」を開発し、サンプル提供を10月1日より開始すると発表した。
IoT技術の発展が進む現代では、ネットワークに接続される端末の増加や、高解像度映像ストリーミングや生成AI技術の利用拡大に伴うデータの通信量が爆発的に増加することが予測されており、そうしたニーズに対応するためには、従来以上のネットワークの高速化や大容量化の実現が求められている。
特に、市場が急拡大しているデータセンターでは、従来の光ファイバーを用いた通信速度である400Gbpsから、次世代の800Gbps/1.6Tbpsへの移行が進んでおり、生成AI用演算機器のデータ通信経路を切り替えるスイッチを構成する光トランシーバーの高速化と大容量通信は必須の条件となりつつあるという。
そうした中、送信用の光デバイスにおいては次世代の800Gbpsや1.6Tbpsへ対応する製品が多数市場投入されているものの、受信用の光デバイスは、性能を満たす製品が少なかったことから、今回新たに同社は、すでに2024年4月に量産済みの送信用光デバイス「200Gbps(112Gbaud PAM4)EML(Electro-absorption Modulator integrated Laser diode)チップ」に加える形で、受信用光デバイスの開発を進めてきたとする。
これまで市場投入されてきた他社現行品100Gbpsの受信用光デバイスの多くがSiGe系なのに対し、今回同社が開発したPD7CP47は、物性的に優位なInP系を材料にしており、光電変換や高速動作を実現しているという。
同製品の最大の特長として、裏面入射型構造と凸レンズ集積構造の採用が挙げられる。
他社現行品100Gbpsの受信用光デバイスでは表面入射型構造が採用されているが、同製品は裏面入射型構造と凸レンズ集積構造を組み合わせることで、受光領域を拡大しつつ、光電変換領域を小さくすることで高速動作に寄与する低素子容量化を実現しており、100Gbps製品と比べて2倍の200Gbps(112Gbaud PAM4)伝送を可能にしたという。また、光トランシーバー内にPDチップを4つ搭載することで、1台の光トランシーバーで800Gbps、8つ搭載すると1台の光トランシーバーで1.6Tbpsの通信が可能であり、データセンター内通信の高速・大容量化に貢献するとしている。
そのほか、凸レンズ集積構造の採用によるフリップチップ実装への対応も特長として挙げているほか、PDチップの電極を信号増幅用ICや基板へのフリップチップ実装に対応させたことで、光トランシーバー組み立て時のワイヤ接続工程が必要なくなり、製造コスト削減にも貢献するとしている。
凸レンズ集積構造の採用により、凸レンズが無い場合と比較して受光領域は約4倍に拡大。PDチップへの入射光が少しずれたとしても受光が可能となったほか、入射光の高精度な調整が不要となり、光トランシーバーの組み立て作業の効率化にも寄与するという。
なお、同社は送受信両方の光デバイスを市場投入することで、IoT技術の発展に伴うデータセンター市場の需要に対応したいとしており、新製品については10月1日のサンプル提供開始のほか、2024年度中の量産化も計画している。