現場の人に〝任せて任せない経営〟を
─ 安田さんから見て、伸びている人はどんな人ですか。
安田 伸びている人は、やはり、現場の士気を上げられる、いわば、この人のためなら一生懸命頑張ろうという気を起こさせる人だと思います。
要するに、人の心をうまくつかんで、ある種の熱気の目標値を明確に共有して、周りの人たちを真っすぐ走らせる力を持っている人。そういう人たちが伸びています。これは人によって、やり方は違いますけれどね。やり方はそれぞれ違いますが、基本的にはそうです。
おそらく、当社に来ている人たちは別に特段、他の人たちより頭がいいわけでも、何でもない。ですが、多くの人たちをその気にさせる俗人的な能力が非常に高い人たちの集団です。
─ 必ずしも偏差値が高い人ではないと。
安田 ええ。本人のIQ(知能指数)が高くても、低くても、そんなものは現場の人には関係ない。でも、現場の人の意見をいろいろ聞いて、「いや、本当にあなたたちの意見は参考になった。よし、これから一緒にそれを実現するために、わたしも協力させてください。ぜひともお願いします」と言われたら、皆やるしかないですよね。
そうしたお願いと感謝を言える人が伸びていると思います。
─ なるほど。お願いと感謝ですか。
安田 お願いと感謝を言える人と的確な指示を出せる人のどちらが結果を出せるのかと言ったら、間違いなく前者です。もちろん、的確に指示を出すことは大事なことなんですよ。大事なことなんですが、例え、的確な指示を出したところで、相手がその気にならなかったら何も変わりません。
どんな人であっても、他人から指示されるより、お願いと感謝を述べられた方が、その気になるじゃないですか。人をその気にさせる力の方がよっぽど組織に与える影響は大きいです。
だから、変に支社長自身がしゃしゃり出るより、具体的にどうしたらいいのかは現場の人たちの方が知っていますからね。的確な指示を出すのは現場の人たちに任せた方がいい。任せる力は必要です。
─ そうなると、現場と本社・本部の関係をどう考えるか。現場に任せたとしても、最後は本部が責任をとらなければなりません。この辺は?
安田 もちろん、現場に任せる以上は、結果のチェックが絶対不可欠です。結果のチェックをして、結果が出た人に明確な評価をすることが絶対不可欠なんです。残念ながら結果が出なかった人であっても、結果を共有して、「何とか今度はリベンジしましょうよ」という思いを持つことが必要ですよね。
その意味では、現場に任せるんだけれど、プロセスコントロールはしない。プロセスコントロールはしないけれども、パフォーマンスレビュー、結果は共有する。表現が難しいですが、〝任せて任せない経営〟ということだと思います。