巨額の開発費をどう工面するか
「電動化・知能化では変化が速く、新興メーカーの動きに淘汰されるという厳しい状況と認識している」─。ホンダ社長の三部敏宏氏はこう語る。〝独立路線〟と言われてきたホンダが日産自動車と包括的な協業を決断したことは、自動車の電動化や次世代のSDV(ソフトウェア定義型)化に直面する中で、もはや単独で生き残れなくなったことを意味する。
このホンダ・日産連合に三菱自動車も合流する。既に日産社長の内田誠氏は「三菱自もホンダとの可能性を論議していく」と示唆していたが、「仲間を増やす」(同)ことで、日本の自動車業界はトヨタ自動車グループとの二大勢力に集約されることになる。
「量ばかりを追求することに慎重な声はあるが、電気自動車(EV)のコストの約3割を占め、車を制御するために欠かせない車載ソフトウエアの開発は巨額な投資。一定の規模がないとコストダウン効果が出てこない」(アナリスト)だけに、三菱自に34.01%を出資する日産に連れ添って三菱自が合流することは「自然な流れ」(同)に映る。
目下、EVでは米テスラや中国・BYDが先行。BYDは祖業の電池だけでなく、モーターやインバーターなどを一体化した電動アクスルやECU(電子制御ユニット)なども内製化。価格競争力のあるEVなどを矢継ぎ早に開発している。
トヨタ陣営の2024年3月期の世界販売台数は1700万台弱。対するホンダ・日産・三菱自は830万台強。各社のクルマに電動アクスルや車載ソフトを搭載できれば、コストを抑制しながら高性能な技術を導入し、経営資源を他の電動化分野にも振り向けることができる。3社間で商品や部品の相互供給も進めていく。
全産業で〝異業種連携〟が進む。ホンダもソニーグループと提携しているが、物流業界ではトラックの混載で日清食品と伊藤園が提携するなど、人手不足などで疲弊しかねない業界の窮余の策にもなっている。
今回の自動車3社による協業は業界の再編もさることながら、垣根を超えた連携劇を生む狼煙となるかもしれない。