アドビは8月9日、「AIを活用したマーケティング変革とは~デジタルアセット管理編~」と称したオンライン勉強会を開催した。同社は、生成AIでどのように顧客体験を向上させることができるのか、生成AIのマーケティング分野における新機能や活用例を紹介するメディア向け勉強会を定期開催することを明らかにしており、今回は第1回目となる。

初回となった今回は、国内で提供開始するデジタルアセット管理の新機能「Adobe Experience Manager(AEM)Assets Contents Hub」の市場背景や製品概要について紹介された。

勉強会には、アドビ プリンシパル ビジネスデベロップメントマネージャーの阿部成行氏らが登壇した。

マーケティング活動への生成AIの活用の促進

阿部氏は、現代を「AI時代」と表現した上で、「アドビは各時代の最先端のテクノロジーをいち早く企業が取り入れることができるようになるためのツールやプロセスを開発している」と、各時代を形成するアドビのイノベーションを紹介した。

  • 各時代を形成するアドビのイノベーションを紹介する阿部氏

    各時代を形成するアドビのイノベーションを紹介する阿部氏

同社は8月7日、日本や米国など6カ国のマーケターと消費者を対象に実施した「マーケター/消費者の生成AI活用実態調査」の結果を発表しており、その中で「生成AIをビジュアルアイデアや画像の生成に活用している国内企業は27%しかいない」という現状を阿部氏は紹介した。

「日本国内のマーケターは、他国と比べて生成AIの活用に消極的という結果になっています。生成AIを業務で活用する上での懸念としては、『コンテンツの有用性や正確性』があげられています」(阿部氏)

  • 企業における生成AIの活用状況に関するグラフ

    企業における生成AIの活用状況に関するグラフ

このような現状の中でアドビは、3月に行われたマーケター向けの年次イベント「Adobe Summit 2024」にて「AI時代における顧客体験管理」をテーマに据え、マーケティング活動への生成AIの活用の促進を進めている。

  • 「AI時代における顧客体験管理」のイメージ

    「AI時代における顧客体験管理」のイメージ

Content Hubの概要

このようなテーマを掲げる同社が提供しているAdobe Experience Manager(AEM) Assetsは、マーケティングキャンペーンやデジタル体験の制作に欠かせない画像、動画、そのほかのコンテンツライブラリを全体にわたって管理する、企業向けのデジタルアセット管理システム(DAM)だ。

その中の新機能として、Content Hubが発表された。

  • Content Hubのイメージ

    Content Hubのイメージ

Content Hubは、適切なアセットの再利用促進と非一貫性の解消によって無駄な作業を省き、使用状況の分析機能や、機密保持を要するコンテンツ配信におけるガバナンス制御も提供する。

企業が保有するクリエイティブアセットの、組織横断的かつ外部パートナーが関与する際の活用方法に新たな道を拓き、効率性の向上を実現する製品となっている。

新しく使いやすいUIが提供されるため、チームはブランド承認済みのアセットにいつでも簡単にアクセスでき、Adobe ExpressとAdobe Fireflyの生成AI技術を通じ、オールインワンのデザインツールを既存のワークフロー内から直接利用できるようになる。

同製品により、マーケティングキャンペーンの実施やパーソナライズされた顧客体験の提供において、企業にとって不可欠なエンドツーエンドのビジネスプロセス、すなわちコンテンツサプライチェーンの中核部分を最適化することができるという。

  • Content Hubの利用イメージ

    Content Hubの利用イメージ

Content Hubの特徴

今回紹介されたContent Hubの特徴は以下の通りとなっている。

使用可能な関連アセットの検索

Content Hubを使えば、ブランド承認済みのアセットを見つけるのはブラウザ検索と同じくらい素早く簡単なものになり、ユーザーは既存アセットの効率的な再利用と創造的なアイデア創出の両方を実現できる。

「ロゴ」「アウトドア」「ピンク」などの単語や、「ホリデーシーズンのプロモーション」「冬のハイキング用品」などのフレーズなど、さまざまな検索パラメータを使ってアセットを検索できる。

また、スマートタグ機能を使ってアセットに重要なキーワードを自動タグ付けして検索性を向上させることも可能。

ブランド承認済みアセットを活用した顧客体験の作成

Content Hubの操作環境から直接、生成AIのAdobe Fireflyを搭載したAdobe Expressにアクセスできるため、ユーザーは既存のワークフローを離れずにアセットをリミックスして新しいデジタル体験を作成できる。

ワンクリックでAdobe Expressのエディターを起動し、コピー文の追加からサイズ変更まで、迅速な調整が可能。さらに、Adobe Expressに搭載されたAdobe Fireflyによって背景の差し替え、オブジェクトの追加、異なるビジュアルスタイルの制作など、新しいバリエーションが作成できる。

これによりコンテンツバリエーションの制作が容易になるため、大規模なパーソナライゼーションが可能となる。

アセット管理コントロールの一元化

Content Hubは、管理者が新製品のローンチなど機密性の高いアセットへの関係者のアクセス管理や、AI生成コンテンツがブランド基準に沿うようにガバナンスコントロールを行うことができる。

また、アドビのアプリケーションにおけるAIの使用状況を透明化するために、Adobe Fireflyが搭載された機能では、出力されたコンテンツに認証情報が自動的に付与される。

これはデジタルコンテンツの成分表示ラベルの役割を果たす、改ざんの検知を可能とするメタデータで、コンテンツの作成や編集プロセスにAIが使用されたかどうかなど、コンテンツに関する詳細な情報を提供する。

継続的な改善に役立つインサイトの獲得

アセットの使用状況に関する詳細な分析(ファイルタイプ、画像の特徴など)は、組織全体でアセットがどのように使用されているかをより深く理解するのに役立つ。

制作チームは、これらのインサイトをもとに使用頻度の高い特定のファイルタイプやビジュアルスタイルにリソースを集中させるなどして、アセットの作成アプローチを改善することが可能になる。

Content Hubのユースケース

Content Hubの機能は、ブランドに沿ったパフォーマンスの高いコンテンツをマーケティング部門が迅速に計画、作成、管理、公開、測定できるようにするもので、次世代の生成AIファーストアプリケーションである「Adobe GenStudio」にも搭載される予定となっているという。

Content Hubのユーザー像としては、「デジタルアセット管理者」「従業員」「エージェンシー」「パートナー/販社」が挙げられている。

  • Content Hubのユーザー像

    Content Hubのユーザー像

またユースケースとしては、「再利用・編集・コンテンツ作成のためのインスピレーションを得るためにアセットを検索・絞り込みし、素早く見つける」「政策に適したブランドコンテンツのバリエーション作成や、ローカライゼーションのためにアセットを編集/リミックス」といった内容が想定されているという。