米国政府は、CHIPSおよび科学法(CHIPS法)に基づき、SK hynixが米国でHBM向け先端パッケージ製造および研究開発(R&D)施設の設立に対して最大4億5000万ドルを支給すると発表した。

SK hynixは、米インディアナ州ウェストラファイエットに同施設を約38億7000万ドルを投じて建設、2028年後半からの量産を計画しており、補助金はそれに伴う約1000人の新規雇用の創出や、米国の半導体サプライチェーンの重大なギャップを埋めるために使われると米商務省は説明している。

米商務省は、この4億5000万ドルの直接投資のほか、適格資本支出の最大25%に相当すると見込まれる投資税額控除を行うなど、CHIPS法によって提供される750億ドルの融資権限の一部である最大5億ドルの政府保証融資を行う予定だという。

今回の新工場は、SKグループの崔(Choi)会長が2022年7月にバイデン大統領との会談中に発表した、EVバッテリーやバイオテクノロジーを含む米国製造業への数十億ドル規模の投資計画基づくもの。今回の補助金支給決定により、米国は最先端のロジック、メモリ、先端パッケージングプロバイダ5社(Intel、Micron Technology、TSMC、Samsung Electronics、SK hynix)すべてと契約を結ぶことになり、最先端チップを生産しているこれらの企業が3社以上ある経済圏は、ほかの国にはないと政府関係者は自慢している。

SK hynixの新工場では、次世代HBMの量産に向けた先端半導体パッケージングラインが設置されるが、その性能は1秒間に最大1.18TBのデータを処理できる現状の最新世代よりも優れたものであり、それが米国で製造されることになるという。

パデュ―大学と研究開発で協力

またSK hynixは、パデュー大学と将来のR&Dに向けた協力関係を構築する予定で、同大学のバークナノテクノロジーセンターやその他の研究機関、業界パートナーとの高度なパッケージングや異種集積の取り組みが含まれるという。また、メモリ中心のソリューションと生成AIのアーキテクチャ(具体的にはメモリ設計とメモリ内/メモリ近傍のコンピューティング)のプロジェクトでも協力する予定としているほか、人材育成の一環として、パデュー大学およびアイビーテックコミュニティカレッジと協力し、ハイテク人材を育成するほか、信頼できるパイプラインを構築するトレーニングプログラムと学際的な学位カリキュラムを開発する予定としている。また、パデュー研究財団やその他の地元の非営利団体や慈善団体の活動もサポート予定としている。

先細るCHIPS法の補助金

米国政府が、これまでに10億ドルを超すCHIPS法に基づく補助金支給を決めたのはIntelの85億ドル、TSMCの66億ドル、Samsungの64億ドル、Micronの61.4億ドル、GlobalFoundriesの15億ドルの5社のみ。総額390億ドルの半導体製造強化予算のうち300億ドル近くがこの5社で占められることとなり、残りは100億ドル(2023年より5年間の予算)を切っている。これまでに補助金支給が決まった残りの10社はいずれも数千万ドル〜数億ドルほどで、今回のSK hynixへの補助金も、同社の米国投資総額38億7000万ドルの11.5%ほどに過ぎない。これまでに600社を超す企業からの補助金申請があったとされるが、すでにApplied MaterialsやSkyWaterなどは、商務省の担当者から補助金支給の却下連絡を受けたとされるなど、その多くが望み薄の状態となっている模様である。