Laboro.AIは8月1日、味の素に対して、AIが料理のレシピデータを組み合せてユーザーのニーズを満たす献立を作成する「献立作成エンジン」を開発したとして、説明会を開催した。
企業の成長を図るAIを開発
初めに、Laboro.AI 代表取締役CEOの椎橋徹夫氏が、同社が展開している「カスタムAI」について、説明を行った。「カスタムAI」は、ビジネスの成果につながるAIをオーダーメイドで開発し、企業のコア業務をAIで変革するもの。
椎橋氏は、AIの利活用は「現行維持=効率化」と「バリューアップ=価値創出」の2つの方向性があるが、同社はバリューアップに取り組むことを掲げていると述べた。
同社は、新規製品・サービス創出やビジネスモデルの変革など、新しいビジネス施策の展開によって企業の成長を図るAI開発のテーマを「バリューアップ型AIテーマ」と定義して、注力している。味の素との取り組みもこれに該当する。
栄養素の条件を満たした複雑な献立作成を実現
「献立作成エンジン」については、シニアソリューションデザイナの広瀬 圭太郎氏が説明を行った。味の素はレシピや栄養など、食に関するデータを大量に蓄積しており、これらは物理的な食品開発に活用されていたが、これらのデータを活用して新たな価値に変換する方針を打ち出したという。
そうした中、食事を作る上で、献立作りを負担に感じ、苦労している人が多いことから、必要な栄養や個人のニーズを満たした献立を作成するエンジンを開発するという構想が持ち上がったという。広瀬氏は、味の素との取り組みについて、「構想検討からPoC、システム実装まで、一気通貫で支援した事例」と紹介した。
献立エンジンは、味の素が所有するレシピデータを組み合わせ、栄養素の条件とユーザーのニーズを満たす献立を作成する仕組み。、味の素保有する 1万を超えるレシピデータ、健康や栄養に関する知見・ノウハウが活用されている。
加えて、ユーザーが栄養素や好みの食材、「運動習慣がある」「減塩したい」など、さまざまな条件を指定すると、その条件を満たす献立を作成してくれる。
献立エンジンの機能はAPIで提供されるため、味の素だけでなく、サードパーティーのサービスでも利用可能だ。サービスの提供者は、自社サービスのユーザーに適した献立を作成するよう事前に条件を指定することができる。
広瀬氏は、味の素との取り組みについて、「『良い献立』を言語化することは難しい。そうした中、両社でエンジンが作成した献立を確認・改善点を探り、粘り強く伴走した」と語った。
デジタルを介して栄養学の正しさと食の楽しさを提供
説明会では、味の素 R&B企画部 マネージャー 勝美由香氏の口からも取り組みについて説明がなされた。同社は2030年までに、環境負荷の50%削減と10億人の健康寿命延伸の両立を目指しているが、献立作成エンジン開発もこれを具現化するための取り組みだという。
同社はレシピを提供する味の素パークというサービスを提供しているが、勝美氏によると、同サービスは1万を超えるレシピデータをもつデータベースに基づいて運営されており、栄養素の情報が付与される アセットがもともとあったとのことだ。
勝美氏は、「デジタルを活用して、われわれが今まで限られた人にしか伝えられていなかった情報をもっと多くの人に伝えられないかと考えた。栄養学の正しさと食の楽しさが両立する必要があり、定量的なことに加えて定性的なことも実現することで、味の素らしいサービスを提供できるのではないかと考えた」と、「献立作成エンジン」を開発するに至った経緯を説明した。
勝美氏は、「献立作成エンジン」の開発におけるこだわりとして、食の楽しさを丁寧に追求したことを挙げた。「上流の過程から、Laboro.AIさんとともに解き明かし、これをシステムにまで落とし込んでもらった。最初から最後まで 味の素らしさにこだわった。味の素らしさを実現するために、伴走してもらった」と同氏。
「献立作成エンジン」は、味の素が今年3月に提供を開始した、献立提案サービス「未来献立」で活用されている。「未来献立」では、食材条件に合わせて栄養バランスが考慮された「ゴールデン献立」を最大8日分作成することが可能。勝美氏によると、「未来献立」は目標を上回るユーザー数を獲得できているとのこと。
加えて、「献立作成エンジン」はAPIとしての提供も始まっており、明治安田生命の「MYほけんアプリ」で利用されている。
勝美氏は、「献立作成エンジンを通じて、B to BとB to Cの両輪で成長していきたい。その歩みは今スタートしたところ」と語っていた。