米大統領選まで3ヶ月を切る中、最近はその動向が大きく変化している。7月にはトランプ暗殺未遂事件が発生し、その直後にバイデン大統領が選挙戦からの撤退を表明し、ハリス副大統領が後継候補となり、選挙戦はトランプvsハリスの構図となった。

両者の支持率は拮抗しているが、調査会社ユーガブや経済誌エコノミストが7月末に公表した統計によると、ハリス氏の支持率が46%、トランプ氏が44%となり、ハリス氏が2ポイントほど上回っている。黒人やアジア系、ヒスパニックなど非白人層の間でハリス支持が急速に広がっているという。また、激戦州7州で実施された統計によると、アリゾナ、ミシガン、ネバダ、ウィスコンシンの4州でハリス氏が2から11ポイントほどトランプ氏を上回る状況になっており、これまで対バイデンでは激戦州で有利になったトランプ氏にとっては厳しい状況に変化している。現時点ではどちらが勝利するかは分からないが、それぞれが勝利した場合、米中の半導体覇権競争はどうなっていくのだろうか。

この行方を探っていく上で重要になるのが、ハリス氏だろうがバイデン氏だろうがそれほど大きな違いはないということだ。

ハリス氏はバイデン政権で副大統領を務めており、基本的な路線はバイデン大統領と変わらない。バイデン政権は一昨年10月、中国による先端半導体の軍事転用を防止するべく、同分野での対中輸出規制を大幅に強化し、新疆ウイグル自治区における強制労働を理由に、それが関わる品々の米国への輸入を禁止する「ウイグル強制労働防止法」を施行したが、ハリス氏も同じ路線を継承するだろう。要は、ハリス政権になっても米国は先端技術分野において先制的に貿易規制を中国に仕掛けていく可能性が非常に高く、米中貿易戦争が継続するだろう。

一方、トランプ政権になってもこれは同じだ。トランプ氏はバイデン大統領やハリス氏を人間的に批判し、人種差別的な発言だと物議を醸し出しているが、我々は“バイデン政権の対中姿勢をトランプ氏は批判していない”点に注目する必要がある。バイデン政権は中国との戦略的競争を最優先課題に掲げ、中国には負けない姿勢を強調してきたが、これについてはトランプ氏も同じ立場にある。トランプ氏が勝利したとしても、トランプ氏がバイデン政権が一昨年10月に発動した先端半導体分野の輸出規制を解除することはない。むしろそれに便乗する形で、先端テクノロジー分野での米国の優位性を確保するため、さらなる半導体関連の輸出規制を先制的に発動していくだろう。

トランプ氏とハリス氏は、表面上は相容れないように映る。しかし、米国の優位性を維持するため中国には負けないという点では同じであり、半導体など先端テクノロジー分野は米国によって最も武器化される(貿易規制の対象となる)領域となっている。