SAPジャパンは7月31日、2024年第2四半期に提供開始したビジネス向けAI「SAP Business AI」の最新機能について発表した。独SAP 最高AI責任者のフィリップ・ハーツク博士が説明を行った。
SAP Business AIは同社のさまざまなソリューションに組み込まれており、2024年第2四半期に提供開始した新たな機能は以下の通りだ(これから提供開始するものも一部あり)。
ハーツク博士は、SAP Business AIについて、「ビジネスAIは、ビジネスプロセスやビジネスアプリケーションのために作ったもの。クラウドERP、サプライチェーン、カスタマーエクスペリエンスなど、当社のあらゆるソリューションに対応し、生産性を上げることができる」と語った。
同社は今年末までに、AIのユースケースをSAPのポートフォリオ全体で100以上用意する計画だ。以下、ハーツク博士の説明を中心に、SAP Business AIの新機能を紹介する。
生成AIアシスタント「Joule」の新機能
生成AIアシスタント「Joule」は昨年11月にSuccessFactorsで提供が開始されたが、新たに分析に対応するという。ハーツク博士は「実行頻度の高いタスク80%をカバーしようとしており、これにより、生産性と効率性の向上を支援する。また、1400の異なるワークフローをサポートする」と説明した。
Jouleは、2024年第1四半期にSAP S/4HANA Cloud Public Editionで利用可能だったが(アーリー・アダプター・プログラム経由)、第2四半期からはSAP S/4HANA Cloud Private Editionでも利用できるようになった。
具体的には、ユーザーは Jouleに自然言語で質問を投げると、コンテンツやアプリケーションへの迅速で文脈に沿ったアクセスを提供する。
また、日本ではデータセンターとしてAmazon Web Services(AWS)に対応しているが、来年はMicrosoft Azureも利用できるようにし、日本語の対応も計画しているという。
JouleとMicrosoft Copilotの統合
ハーツク博士は、顧客から「コパイロットはどの程度必要か」という質問を受けるが、「2つのコパイロットで十分」と答えると述べた。2つのコパイロットとは、同社のJouleとマイクロソフトが提供している「Copilot for Microsoft 365 」であり、これらはシームレスに統合される。
これは、今年6月にスペイン・バルセロナで開催した年次イベント「SAP Sapphire Barcelona」で発表されたもの。両者の統合により、SAP 製品上に格納されている企業データと、Microsoft 365のナレッジが組み合わされ、意思決定のためのリッチなインサイトが提供される。ハーツク博士は、「2024年末に、最高の体験を提供できる」と語っていた。
AI開発基盤「SAP Business Technology Platform」
同社は現在、AI開発基盤「SAP Business Technology Platform」(以下、SAP BTP)上の生成AIハブを通じて、LLM(大規模言語モデル)へのアクセスを提供している。
SAP BTPを利用することで、従業員が生成AIを使った実験やイノベーションを行える、安全でエンタープライズ対応のフィールドを用意できる。開発者は生成AIハブ内のチャットインタフェースで対話できるようになり、生成AIモデルとの直感的なインタラクション、マルチモデルサポート、中断のない連続対話によるコンテキスト認識、カスタマイズ可能な設定が可能になった。
ハーツク博士は、「SAP BTPが生成AIに対する正しい選択肢」であるとして、その理由を説明した。まず、自力で生成AIを利用する環境を構築するとなると、ハードウェアの購入・運用、LLMのホスティングと最適化、安全なアクセスの確保といったことをすべて行わなければならない。次に、ハイパースケーラーの環境を利用すると、手間は省けるが、ロックインの可能性、手作業によるSAPプロセスやデータの統合、ビジネス権限の欠如といった課題が生まれる。しかし、SAP BTPを利用すれば、こうした課題が解決されているという。
また、ハーツク博士は生成AIハブの特徴として、「モデルを容易に切り替えられる」「組み込みの生成AIケースの拡張性」「カスタムの生成AIの拡張機能」「データグラビティ」を挙げた。