マカフィーは7月31日、現在開催中の大規模国際スポーツ大会などの機会に乗じた詐欺が増加していることを明らかにしたと報告した。詐欺師らは熱気を帯びるイベントを利用し、偽のチケットや模倣品の販売など、警戒心が緩んでいるファンに悪質な詐欺を働くのだという。
こうした詐欺には高度なソーシャルエンジニアリング技術(人間の感情を利用して、重要な情報を侵害する手法)が使われており、AIの進歩によって従来以上に巧妙な詐欺が身近なものになっているのだという。音声クローニング技術を使えば、詐欺師は低コストで説得力のある偽の音声メッセージを作成可能。同社が2023年に発表したAI音声詐欺の調査では、高度な技術が詐欺師の手に渡った際の脅威が増していることが示されている。
また、直近では、大規模国際スポーツ大会に絡めて、イーロン・マスク氏の声でナレーションされた架空のディープフェイク動画がストリーミングサービスで注目を集めている。当該の動画では詐欺師が著名人を利用して信憑性のあるストーリーを作り出し、フェイク情報を拡散している。
マカフィーは、国際的なイベントの開催タイミングに合わせて詐欺を働くケースが多いため特に規制が緩いプラットフォームで見られるセンセーショナルな主張が真実かどうか問い続けることが重要だとしている。また、巧妙な詐欺に騙されないよう、常に公式チャンネルを通じて情報を確認することを推奨している。
フェイク動画の主な手法としては、AI音声クローニング、画像拡散、リップシンク(画面の唇の動きと発せられる音声が連動している動画)などが挙げられる。動画がまるで本物の作品に見えるように、巧妙に作られている。しかし、動画の中には画像を重ねて使用しているシーンが多くあり、注意深く見ると特定の不具合や違和感が確認できる。
下図はイーロン・マスク氏を用いたフェイク動画。元の素材はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のインタビュー動画が使用されており、その上から修正が加えられている。
マカフィーはこうした状況に対し、国際的イベントを自宅で応援するとしても、警戒心を持つことが重要だと訴えている。特典をうたう未承諾のテキストメッセージには警戒し、見知らぬウェブサイトを避け、さまざまなソーシャルプラットフォームで共有される情報に対しては懐疑的であることが必須。批判的な目を持ち続け、オンラインでの安全性を高めるツールの使用を推奨している。