【農林水産省】アジアでの温室効果ガス削減プロジェクトを発表

農林水産省は6月28日、東京都千代田区で記者説明会を開き、フィリピンとベトナムなどで水田からでる温室効果ガスのメタンを減らす事業について、今夏から本格的に動き出すことと発表した。アジア開発銀行と協力したプロジェクトで、JCMと呼ばれる政府の二国間クレジット制度を活用する。メタン削減のクレジットが発行されれば、JCMの農業分野では初。

 JCMは、日本の環境技術を使ってアジアなどで温室効果ガスを削減する。その削減分をクレジットとして換算し、日本企業などがそれを買う仕組み。いわゆるパリ協定6条に基づくもので、エネルギー分野などではすでに実績がある。水田から排出される温室効果ガスは、農業分野全体の11%を占めるため、大きな課題となっていた。

 農水省とアジア開発銀行がフィリピンやベトナムの各政府と委員会をつくり、具体的な手法を作成するなど準備を進めてきた。実際に事業を進めるのは、民間企業の3グループで、スタートアップ企業がデベロッパーとなり、クボタや東京ガスなどが参画している。地元の農民にも利益の一部を還元して意欲を高める方針で、参画企業にとっても新たなビジネスチャンスにつながる可能性もある。

 計画では、間断かんがい技術(AWD)という取り組みをフィリピンなどの水田で推し進める。これは、稲が育っている間にわざと水を落とす仕組みで、日本では「中干し」と言って昔から行われているという。

 フィリピンなどではあまり行われておらず、新たに数回実施する(1回に10日ほど)。

 日本では昨年、温室効果ガスの排出量削減や吸収量をクレジットとして国が認証するJ―クレジット制度で「水稲栽培による中干し期間の延長」が認められている。同じく稲作が盛んなアジアにも広がるか、注目されている。

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