YMTCが米国でMicronを提訴
中国のNAND大手YMTCが、同社が米国で出願した11件の特許をMicronが侵害していると北カリフォルニア地区連邦地方裁判所に提訴した。
YMTCの特許を侵害しているとされたMicronの製品は、96層(B27A)、128層(B37R)、176層(B47R)、232層(B58R)の3D NAND製品、ならびに一部のDDR5 DRAM製品(Y2BMシリーズ)だという。同社はMicronに対し、これらの製品の販売を停止し、特許使用料を支払うことを求めていると複数の米国メディアが報じている。
YMTCは2023年11月、Micronの子会社に対し、3D NANDに関連する8件の米国特許を侵害したとして、米国北カリフォルニア地方裁判所に訴訟を起こしているが、今回の訴訟はそれとは別件となる。このほか、YMTCは、Micronが出資するデンマークのコンサルティング会社(Strand Consult)が虚偽の情報を流布してYMTCの市場評価とビジネスに損害を与えたとしても米国で訴訟を起こしている。
米国商務省は2022年、YMTCをエンティティリストに登録し、128層以上の3D NAND製造に必要な米国製半導体製造装置の入手を禁止したが、その時点でYMTCの128層3D NANDがAppleのサプライチェーンに入っており、当時のAppleはコスト面や入手先の多角化などから採用を望んでいた模様である。YMTCの陳南翔CEOは「米国の制裁強化により中止せざるを得なくなった」と経緯を説明していた。ただし、YMTCのNAND製品はHuaweiはハイエンドスマートフォン(スマホ)などに採用されており、実績を伸ばしている。
HuaweiがMediaTekを中国で提訴
このほかHuaweiが最近、5Gの特許をしたとして中国の地方裁判所にスマホ用プロセッサ大手のMediaTekを提訴したと海外メディアが報じている。
この動きは、Huaweiの半導体設計子会社HiSiliconの競合であるMediaTekを弱体化させ、HiSiliconの成長の後押しやQualcommをけん制する狙いがあるとみられる。MediaTekは、7月19日に台湾証券取引所に提出した書類でこの訴訟を認めたがコメントは控えており、訴訟内容の詳細は不明である。
関係者によると、Huaweiの今回の提訴は、自社の技術力を海外に向けて誇示するとともに、Huaweiの特許を使用する世界中の企業からロイヤリティをくまなく徴収して、研究開発に回すためだという。
Huaweiは、米国の輸出規制対象となって以降、収入が減少を補うために多数の企業相手に特許訴訟を起こすなど、ロイヤリティの徴収強化を図っている。同社のライセンスおよびクロスライセンスのパートナーには、フォルクスワーゲン、メルセデスベンツ、アウディ、BMW、ポルシェなど欧州の自動車メーカーが含まれているほか、2023年にはOPPOおよびSamsungとの5G技術に対するクロスライセンス契約を締結している。同社の特許を使用している日本企業数十社からもライセンス料を徴収している模様で、2022年の特許使用料収入は総額5億6000万ドルほどで、今後さらに増える見込みだという。
これまでの中国企業は、他国企業の特許を侵害をしたとして訴えられる側というイメージが強いが、近年、実力をつけてきており、今後は今回のYMTCのMicronの提訴のような中国企業が他国の企業を特許侵害で訴えるケースが増えていく可能性が出てきている。