経済産業省は、7月1日付で大規模な組織再編を実施した。世界情勢の不安定化で経済安全保障に対する注目が高まる中、貿易経済協力局を「貿易経済安全保障局」に改称。脱炭素化と経済成長を両立させるグリーントランスフォーメーション(GX)の推進体制も整えた。
2001年の省庁再編で通商産業省から経産省に名称が変更されて以降、最大規模の見直しに踏み切り、山積する重要課題への対応を強化した。
経済安保分野の施策は、外務省や内閣府なども手掛けている。貿易経済安保局は、他省庁との連携や省内の総合調整を担う司令塔との位置付けだ。局の中核となる経済安保政策課を新設し、初代課長には米国大使館での勤務も経験した国際畑の人材を起用した。
体制強化により、半導体などの重要産業支援やサプライチェーン(供給網)強靱化、技術情報の流出防止といった政策に重点的に取り組む。一方、通商戦略と経済協力施策を一体的に進めるため、旧貿易経済協力局にあった貿易振興課や通商金融課は通商政策局に移管した。
また、産業技術環境局は「イノベーション・環境局」に改称。内部にGXを推進するグループを設け、脱炭素分野の投資促進や資源循環などを担う部署を配置した。同局には、イノベーション政策課やイノベーション創出新事業推進課を置き、経営革新やスタートアップの支援体制も拡充した。
齋藤健経産相は再編に当たり、「諸外国がかつてない大胆な産業政策にかじを切り、政策自体が国際競争の時代に入っている」と危機感を表明。「これまでよりも国として一歩前に踏み出す気概を持ちながら、あらゆる政策を総動員して経済産業政策の新機軸を強力に推し進めていきたい」と説明した。